東南アジアでも日本品質のトマトやいちごを高収量で生産できる「植物工場」とは:スマートアグリ(2/3 ページ)
アジアモンスーンPFSコンソーシアムが「アジアモンスーンモデル植物工場システム」を発表。野菜や果物の効率的な栽培で知られるオランダ式ハウス栽培施設が1ha当たり6億〜8億円かかるところを、今回開発した技術であれば1ha当たり2億円未満に抑えられる。トマトやいちご、パプリカなどの生産性や品質についても十分な成果が得られた。
東南アジアで日本品質のトマトやいちごを生産する上での2つの課題
会見では、パナソニック、三菱ケミカル、シチズン電子がそれぞれ「アジアモンスーンモデル植物工場システム」における開発技術について説明した。
パナソニックが開発したのはクラウド型統合環境制御システム「Smart 菜園’s クラウド」とクラウド型農業管理システム「栽培ナビ」である。パナソニック イノベーション戦略室 戦略企画部 技術戦略課 主幹の松本幸則氏は「東南アジアで日本品質のトマトやいちごを生産する上での課題としては『栽培環境』と『栽培管理』の2つがあった」と説明する。
まず栽培環境では、トマトやいちごを栽培する上で、東南アジアのような高温多湿環境がもともと適していないことが課題になる。ハウス栽培ではあるものの、日射を取り入れつつハウス内の温度を上げない、湿度は高過ぎても低すぎてもいけない、潅水量やCO2濃度は日射量に応じて変動させるといった環境バランスを高温多湿環境で実現するのは難しい。また、日本国内のハウス栽培で行っている作業者に依存した栽培管理を、東南アジアなどの現地担当者が行えるのかという課題がある。日本国内でも高齢化による人材不足を想定すれば、作業者に依存しない管理法の確立と標準化が必要になる。
そこで開発したのが、栽培環境に対応するためのSmart 菜園’s クラウドと、栽培管理に対応するための栽培ナビだ。Smart 菜園’s クラウドは、温湿度や日射、CO2、風向風速、雨、養液、カメラなどのセンサーデータに基づき、換気扇、遮光、側窓、ミスト、ヒートポンプ冷房、培地冷却、潅水などの環境制御機器をコントロールし、栽培ハウス内の環境を適切に維持できる。また、栽培ハウスの状態をクラウド上に仮想的に再現し、リアルの栽培ハウスとネットワークで同期することで、遠隔地からの常時のリモート監視/制御を実現した。
栽培ナビは、作業データや生育データ、栽培計画・分析、農薬管理など作業者に関わるデータを集積することで、栽培管理の改善と方向付けに役立てられた。「2つのクラウドシステムを活用すれば、遠隔地への栽培指導も可能になり、東南アジアなどアジアモンスーン地域における日本品質の栽培を強力に支援できる」(松本氏)としている。
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