クレームの初期対応を迅速化、トラブル内容を自動分類するAIソリューション:製造ITニュース
図研プリサイトは2021年4月1日から、クレーム発生時の初動対応をサポートする、電子部品メーカーの品質保証部門向けソリューション「Qualityforce」を発売する。クレーム内容をAIが自動分析して、類似のクレーム履歴を担当者に提示。トラブルの原因などを素早く推測できるため、クレームの早期鎮静化に貢献し得る。
図研プリサイトは2021年4月1日から、クレーム発生時の初動対応をAI(人工知能)で支援する、電子部品メーカーの品質保証部門向けソリューション「Qualityforce(クオリティーフォース)」を発売する。クレーム内容をAIが自動で分析し、類似した過去のクレーム履歴を担当者に提示。トラブルの原因などを素早く推測できるようになるため、クレームの早期鎮静化に貢献し得る。
購入費用は500万円で、初年度保守費用が100万円(いずれも税別)。
違う言葉で登録したクレームも自動分類
Qualityforceは電子部品メーカーにおけるクレーム対応において、トラブルの早期鎮静化と、クレーム対応の属人化解消を可能にするソリューションである。要となるのが、図研プリサイトが開発した「クレーム内容認識AI」などのAIだ。電子部品メーカーの多くは以前からクレーム情報をデータベース化して管理しているが、それらを実際のトラブル対応に十分生かしているとは言い難い状況だった。Qualityforceはこうした状況を変え、データベースのAI分析を通じて、初動対応強化に生かす。
クレーム内容認識AIは、データベースのクレーム対応履歴を基に、新しく入力されたクレーム内容から「症状」「原因」「解決策」の3点を自動推測して担当者に提示する。例えば「リードの端子が黒色に変色している」と入力した場合、一致する文面がなくても、AIが過去のデータベースから自動的に「端子の変色に関わるクレーム」を発見して、原因や過去の解決策に関する履歴を担当者に提示する。
これによってトラブルの内容が既知か、未知かを担当者が容易に判断できるようになる。既知の場合は開発工場や関係部署への連絡フローを省略して顧客に対策を伝えられるため、初動対応の迅速化に貢献する。また、機器の専門知識に乏しい担当者でも対応しやすくなるため、属人化の解消がある程度見込める。
過去の不足データも自動補完
図研プリサイト マーケティング部 ナレッジ製品営業課 課長の倉本将光氏は「多くのメーカーではクレームを寄せた顧客企業の担当営業が、問題報告の第一の窓口となることが多い。担当営業はクレームを受けた後、顧客の訴え通りにデータベースにそのまま入力するので、定型化されていないケースが多い。このため、同一内容のクレームでも表現が異なるケースも少なくない」と指摘する。
例えば、機器から火が出た場合に「発火する」「燃える」という表現を別々に用いている場合があり得る。これだと単純な文字列検索では類似クレームを発見しづらいが、クレーム内容認識AIは似たクレーム内容を自動推測して提示できる。ただし、表現の揺らぎをAIに学習させるための、いくらかの手作業は必要だ。
また、「クレーム分類AI」も搭載したことで、クレームの入力時に記入し忘れた項目があっても、過去の類似クレームを基に空白部分を自動推定して補完することが可能になった。クレームを自動分析してグラフ化する機能もある。顧客別、製造工場別のクレーム件数や、顧客側、自社側など責任元別クレーム件数、原因内訳などをグラフ化する。これらのグラフを関係部署にも共有する機能も搭載した。
なお、Qualityforceは顧客の専用サーバに導入して、そこに既存のクレーム情報データベースの内容をインポートする仕組みを取っている。新規のクレームも従来通りデータベースに蓄積されていくので、導入に当たって運用方法を変える必要はない。
「クレーム情報データベースを有効に活用しようとしても、過去の登録データを全て整理するのは手間が掛かり難しい。既に分析を行っている企業でも、分析ツールとしてExcelを使用している場合は、過去データを入力に適した形式に整形する必要があり手間が掛かる。こうした労力を省けるのは大きい」(倉本氏)
今後のQualityforceの展開について、倉本氏は「3年間で、電子部品メーカー50社程度への販売を見込んでいる。将来的には重要度の指標などをクレームにラベリングしてもらうことで、重大性の高いクレームを関係各所に自動的に通知するといった機能の搭載も予定している」と語った。
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