設計者CAEの検証は“理想的な設定”だけでよいのか?:実例で学ぶステップアップ設計者CAE(10)(2/3 ページ)
初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第10回は、前回に引き続き「疲労解析」をテーマに“最悪ケース”も考慮したアプローチを取り上げる。
手順3:
荷重の方向を決めるための平面が用意できたので、「SOLIDWORKS Simulation」に移動します。
設計者CAEでは、解析を行った後に、その結果を踏まえてモデルを編集し、再び解析を実行する……といった繰り返し作業がよく行われるわけですが、SOLIDWORKS Simulationでは、スタディの複製が可能です。今回は、前回行った「面に垂直な荷重設定のスタディ」を複製して、「軸線が傾いた場合のスタディ」を作成します。その際、荷重の方向についての編集作業は必要となりますが、材料定義やメッシュサイズに関してはそのまま複製できます。
比較検証の解析を行う場合、比較対象同士の材料定義やメッシュサイズが異なっていては正確な比較になりません。そのため、こうした機能を利用して、同じ条件を複製することが重要です。ちなみに、疲労解析は静解析スタディを利用しています。複製した疲労解析のスタディの関連付けは複製元の状態のままなので、正しく関連付けを設定し直します。
手順4:
静解析のスタディを複製し、荷重方向の編集を行ったら、続けて、疲労解析と座屈解析についても複製&編集を行って、解析を実行します。このとき、SOLIDWORKS Simulationでは、スタディを個別に計算実行する必要はなく、スタディを一度にまとめて指定して実行することが可能です。
3.解析結果
それでは、解析結果を順番に見ていきましょう。
応力解析
応力について前回の結果と比較すると、von Mises応力で6%、最小主応力で1.6%高い値となりました。
補足:Von Mises応力について
Von Mises(フォンミーゼス)応力とは、垂直応力とせん断応力から計算されるスカラー量(大きさのみを持つ量)の応力のことを指します。そのため、フォンミーゼス応力には引張/圧縮の区別がありません。そこで、最大主応力による引張応力の評価、最小主応力による圧縮応力の評価を行います。前回もお話しましたが、圧縮応力はマイナスになるほど大きい応力値を示します。
座屈解析
座屈解析の結果も、「1 < 座屈安全係数」となり、“座屈は発生しない”とい結果を得ました。
疲労解析
疲労解析の結果も前回と差異はなく、モデル内の交番応力がSN曲線を上回らないという状況となりました。
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