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燃費への貢献だけでなく違和感の解消も不可欠な「回生ブレーキ」ブレーキの歴史と未来(2)(2/3 ページ)

このコラムでは、自動車に乗っている人だけでなく、道路の近くにいる全ての人やモノを守るために欠かせないブレーキについて、自動車関係の企業で働く現役エンジニアの視点で解説します。今回は回生ブレーキや回生協調ブレーキなど、環境対応車向けのブレーキシステムについて紹介します。

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回生ブレーキと回生協調ブレーキの違い

 このように回生ブレーキと回生協調ブレーキは、名前は似ていますが大きく違います。この違いを、ブレーキシステムの構成や回生ブレーキで回収できるエネルギー量といった観点で確認します。

 回生ブレーキは、従来のブレーキ機構に変更を加えなくても実現可能です。従来製品と共用できる部品が多く、コストアップを抑えながら燃費の改善を実現できます。ただし、エンジンの負圧でドライバーの操作力をサポートしているシステムの場合、電動パワートレインでは十分なエンジン負圧を得られなくなる可能性があります。その場合には、負圧を発生させる部品の追加や負圧を必要としないシステムへの変更が必要です。

 回生協調ブレーキのシステムには、先述の通りドライバーの操作と摩擦ブレーキを直結させないためブレーキバイワイヤが必要です。摩擦ブレーキと回生ブレーキの量を調整するために、それぞれのシステム間で制動力に関する情報をやりとりする仕組みも欠かせません。回生協調ブレーキは、伝統的なブレーキシステムに対して、ブレーキバイワイヤ機構や通信機能を追加するため、ブレーキシステム構成を大規模に変更する必要があります。

「回生ブレーキの違和感」との戦い

 こうした新しいブレーキ技術では、いかに燃費改善に貢献するかという面だけでなく、運転する人の違和感をどうやって低減するかという課題も生まれました。

 協調しない回生ブレーキの場合には、ドライバーがブレーキペダルを操作していないときに、ブレーキが強くなったり弱くなったりすると感じる現象が指摘されました。回生ブレーキによって発生させる制動力の最大値を大きくしすぎると、制動力の増減幅が大きくなり、ドライバーが感じる違和感も強くなってしまうのです。

 このような違和感はクレームにつながる可能性もあるため、回生ブレーキによって発生させられる減速度は、ドライバーが違和感を覚えないレベルに抑えられています。回生協調ブレーキと比較して、回収できる電気エネルギーの量が小さく、燃費への貢献度も少なくなるという課題があります。

 回生協調ブレーキは、協調しない回生ブレーキの上述の課題を克服することができます。回生ブレーキを最大限活用し、ドライバーの要求に対して回生ブレーキだけでは不足する分を摩擦ブレーキで補うという考え方のため、協調しない回生ブレーキよりも多くのエネルギー量を回収でき、燃費への貢献度も大きくなるのです。ただ、こちらも乗り心地の自然さに関してさまざまなハードルがあります。

 年々改善され続けているものの、ドライバーの操作に対してブレーキが自然ではないという指摘があります。過去には「カックンブレーキ」と言われ、嫌われることもありました。「カックン」「自然ではない」という感想が出る主な要因としては、ブレーキバイワイヤの採用と回生ブレーキと摩擦ブレーキの協調制御が影響しています。


ブレーキ協調制御の例(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 なぜ違和感につながるのかを紹介します。1つ目は、ブレーキバイワイヤを採用することによる違和感です。これまで、ドライバーがブレーキペダルを操作する際には、ブレーキ圧を発生させることでブレーキペダルに反力を発生させ、ドライバーは発生した反力を足の裏で感じながら操作していました。強く踏み込んでいけばその分のブレーキが利くため、ドライバーの操作に対して感覚通りのブレーキがかかります。

 回生協調ブレーキでは、回生ブレーキを発生させている間に摩擦ブレーキを発生させないようにすることで電気エネルギーを効率よく回収するために、ドライバーの操作と摩擦ブレーキが発生する機構が切り離されています。そこで、ドライバーが感じるブレーキ反力を従来とは別の方法で再現するアプローチが採用されました。踏み込んでいけば踏み込んでいくほど反力が大きくなる特性を実現するために、ばねやゴムを組み合わせた部品構成が多く採用されています。

 ブレーキバイワイヤのシステムが開発された当初は、この設定がうまくいかず、ドライバーに違和感を与えてしまっていました。最近のブレーキバイワイヤシステムでは、複数のばねやゴムをうまく組み合わせることで違和感を小さくすることに成功しています。

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