薬やワクチンの高速注入を可能にした、ニードルポンプパッチを開発:医療機器ニュース
東北大学は、新開発の多孔性ポーラスマイクロニードルと、電気により流れが発生する性質を利用し、電気式の貼る注射「オール有機ニードルポンプパッチ」を開発した。多量かつ高速の注入と、皮下組織液の高速採取を可能にしている。
東北大学は2021年1月18日、新開発の多孔性ポーラスマイクロニードル(PMN)と、電気により流れが発生する性質を利用し、電気式の貼る注射「オール有機ニードルポンプパッチ」を開発したと発表した。多量かつ高速の注入と、皮下組織液の高速採取を可能にしている。
皮膚に貼って使用するマイクロニードルは、短い針が多数並んだ形状をしており、マイクロニードルに塗布、あるいは内包した薬剤が皮膚刺入後に溶出する。溶出には一定時間が必要になるため、今回の研究では、分子やイオンを透過する多孔性のPMNを開発した。
PMNは、注射器のように圧力を利用して押し出すことが難しいため、電気で液体の流れを発生、制御できる電気浸透流(EOF)を活用した。EOFは、固定電荷を持つイオン導体が、対イオンの移動方向へ溶媒を移動させる現象だ。そのため、電荷を固定したハイドロゲルをPMNに充填し、経皮投薬や組織液の採取を加速できると想定した。
このPMNに、研究グループが以前開発した酵素によるバイオ発電パッチを組み合わせ、外部電源を必要としないオール有機物の使い捨て型ニードルポンプパッチを作製した。
これを用いてブタ皮膚へデキストリンを注入したところ、皮下注入が確認できた。また、EOFにより、グルコースの抽出も促進された。
バイオ電池PMNパッチによる経皮EOF:a)バイオ発電PMNパッチの写真、b)フルクトース/O2バイオ電池の構造と出力特性、c)アノードにおけるブタ皮膚切片へのデキストリンの注入、d)カソードにおけるグルコースの抽出(クリックで拡大) 出典:東北大学
研究グループは今後、美容、健康、医療分野における経皮セルフメディエーション、簡易ワクチンへの応用を具体化していく。
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