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2021年はロケット開発がさらに過熱、日本初の月面探査も実現する!?MONOist 2021年展望(3/3 ページ)

2021年もさまざまな話題がある宇宙開発。今回は、「大型ロケット開発」「民間の小型ロケット」「商業化が進む月面探査」の3つをテーマに、2021年の動向を見ていきたい。

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日本初、英国初の月面ローバーとなるか

 2020年に続き、2021年も月探査はにぎやかになりそう。まず注目したいのは、日本のダイモンが開発した超小型ローバー「YAOKI」だ。前述したAstroboticのPeregrineランダーに搭載されるため、打ち上げ時期はVulcanロケットの進捗次第となるが、もし2021年内に打ち上げられ、着陸に成功したら、日本初の月面ローバーとなる可能性がある。

YAOKIのプロトタイプ
YAOKIのプロトタイプ。2輪にしっぽ(スタビライザー)が付いた形状となる(クリックで拡大)

 YAOKIは手のひらサイズの超小型ローバー。2輪型で上下対称のため、もし裏返ってしまっても、そのまま走り続けることが可能だ。ローバーの名前は、この走破性能の高さから、“七転八起”に由来している。前面にはカメラを搭載しているので、月面からどんな映像が届くのか、楽しみにしたいところだ。

※)ダイモン「YAOKI」のWebサイト

 またPeregrineには、英Spacebitの超小型ローバー「Asagumo(朝蜘蛛)」も搭載される。Asagumoの特徴は、なんと4足歩行型であることだ。同社は将来的に、月の地下にある溶岩チューブ内部の探査を計画。ここは岩がゴロゴロしていると考えられ、車輪だと走行しにくい。4足歩行の方が有利と考え、Asagumoでその技術を実証する。

Asagumoのプロトタイプ
Asagumoのプロトタイプ。1Uキューブサットに脚が生えたようなスタイルだ(クリックで拡大)

 ちなみにAsagumoという名前は、ファウンダー/CEOのPavlo Tanasyuk氏が来日した際に、「朝の蜘蛛は福が来る」という言葉に感銘を受け、そこから決めたという。月惑星探査ローバーの移動方式として、4足歩行型というのは前代未聞であるが、文字通り「最初の一歩」を月面に残すことができるか、興味深いところだ。

※)Spacebit「Asagumo」のWebサイト

 超小型のローバーは、開発費や輸送費を安く抑えられるため、こういったユニークなチャレンジがやりやすい。地球低軌道では、超小型衛星がこの役割を果たしてきたが、いよいよ月面でも、自由で面白い取り組みができる時代になってきたといえるだろう。

 なおPeregrineは、CLPSで契約したNASAの機器を搭載するが、CLPS関連のランダーとしては、もう1つ、米Intuitive Machinesの「Nova-C」が2021年10月の打ち上げを予定している。こちらは実績のある「Falcon 9」ロケットを使用するため、年内に打ち上げられるかは、ランダーの開発状況次第になるだろう。

Intuitive MachinesのWebサイト
Intuitive MachinesのWebサイト。打ち上げまでのカウントダウンが出ている(クリックで拡大) 出典:Intuitive Machines

※)Intuitive Machines「Nova-C」のWebサイト

 NASAのCLPSは、月面への輸送に民間企業を活用することで、宇宙産業の成長を促進させ、同時にコストの削減も狙う。予算規模は、2028年までの10年間で26億米ドル(約2730億円)。NASAはこれまで、国際宇宙ステーションへの輸送でも同様のプログラムを実施しており、SpaceX躍進の一因となった。CLPSは、それを月面まで延長したものといえる。

 宇宙開発が始まって以来、月面はずっと国家の領域であったが、いよいよ、民間開発のランダーが続々と到着する時代が始まる。AstroboticとIntuitive Machinesのどちらが月面一番乗りとなるかは分からないが、2021年は月面の商業探査元年となるかもしれない。

※)NASA CLPSのWebサイト

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