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スケール感の異なるモデルが混在してもシステム全体で安定したメッシュ生成/電磁界解析を実現CAEニュース(1/2 ページ)

アンシス・ジャパンはオンライン記者説明会を開催し、高周波3次元電磁界解析ソフトウェア「Ansys HFSS」の最新バージョン「Ansys HFSS 2021 R1」に搭載された新技術「Ansys HFSS Mesh Fusion」の詳細について説明した。

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 アンシス・ジャパンは2021年2月17日、オンライン記者説明会を開催し、高周波3次元電磁界解析ソフトウェア「Ansys HFSS」の最新バージョン「Ansys HFSS 2021 R1」に搭載された新技術「Ansys HFSS Mesh Fusion」(以下、Mesh Fusion)の詳細について説明した。

高周波3次元電磁界解析ソフトウェア「Ansys HFSS 2021 R1」に搭載された新技術「Ansys HFSS Mesh Fusion」について
高周波3次元電磁界解析ソフトウェア「Ansys HFSS 2021 R1」に搭載された新技術「Ansys HFSS Mesh Fusion」について ※出典:アンシス・ジャパン [クリックで拡大]

 Mesh Fusionは、スケール感の大きく異なる形状が複数混在するような解析モデルに対して、それぞれの形状に合わせて最適なメッシュ生成を実現し、高精度な解析を支援する技術である。近年、高度化・高機能化が急速に進み、コンポーネント間やシステム全体における複雑な相互作用を解析することが求められる家電、自動車、通信機器の開発などに貢献する。

高周波3次元電磁界解析ソフトウェア「Ansys HFSS」とは

 HFSSは、高周波向けの3次元(フルウエーブ)電磁界解析ソフトウェアとして知られ、家電から自動車、通信機器に至るまで、さまざまな製品開発における電磁界現象の解析に用いられている。

 有限要素法(FEM)でMaxwellの方程式を計算する方式を採用しており、3D CADデータを基にした解析モデルをHFSSに入力し、それぞれのオブジェクトの電気的特性を1つずつ割り当てて、解析が行われる。その際、HFSSは対象形状のMaxwellの方程式を解くために、形状を小さな要素に細分化していくが、HFSSでは「四面体メッシュ」を採用する。

 解析モデル全体に対して四面体メッシュを充填(じゅうてん)し、最終的に大きな行列を1つ作り出して、Maxwellの方程式を計算する。例えば、電子レンジであれば、エネルギーが投入されると庫内にどのような電磁場分布が現れ、試料に対する温まりのムラ(電気的損失のムラ)がどうやって生じているのかを、可視化された解析結果で読み取ることができる。「電子レンジメーカーは、この結果を見ながら、どのようにターンテーブルを回せばよいか、どのように電磁波を照射したらよいかを検討し、温まりのムラを低減するための設計改善に役立てることができる」(同社)という。

高周波3次元電磁界解析ソフトウェア「Ansys HFSS」について
高周波3次元電磁界解析ソフトウェア「Ansys HFSS」について ※出典:アンシス・ジャパン [クリックで拡大]
電磁界現象に最適なメッシュ生成を可能にする「アダプティブオートメッシュ」技術について
電磁界現象に最適なメッシュ生成を可能にする「アダプティブオートメッシュ」技術について ※出典:アンシス・ジャパン [クリックで拡大]

 HFSSでは「アダプティブオートメッシュ」と呼ばれる技術により、電磁界現象に最適なメッシュ生成を可能とし、高品質の解析を実現する。例えば、通信機器に組み込まれるアンテナに対してメッシュを生成する場合、実際にどのような電磁界現象が生じるかを確認しながら、解析精度に影響する部分にだけ細かいメッシュを生成することで、ムダにメッシュが細かくなり過ぎることを回避し、電磁界現象に最適化されたメッシュを作り出すことができる。「この仕組みにより、解析者のスキルや経験に依存せず、同じ精度で解析結果を得ることができる」(同社)。

非常に小さな形状と大きな形状が混在するモデルの難しさ

 このように高精度な解析を支援するHFSSだが、ここでキーになっているのが前述した四面体メッシュの採用だ。四面体メッシュは一般的な格子メッシュと比べて、CADデータの形状に忠実なメッシュを切ることができ、精度の良い解析が行える。しかし、CADデータの座標値に対して忠実であるが故に、複雑な形状のCADデータを扱う際、ノンマニホールドやオープンエッジ、自己交差などが原因で、メッシュ生成に失敗してしまうケースも見られる。そこで、HFSSでは座標値を扱う際、ある一定の許容値を持つことでこの問題(CADデータの欠陥によるメッシュ生成の失敗)を回避する仕組みを導入している。

四面体メッシュについてCADデータを忠実に扱う場合の課題について (左)四面体メッシュについて/(右)CADデータを忠実に扱う場合の課題について ※出典:アンシス・ジャパン [クリックで拡大]

 だが、この許容値による回避にも限界がある。「寸法的に非常に小さな形状と非常に大きな形状が混在するモデルを対象にしたメッシュ生成だ。例えば、IC(集積回路)の微細構造を考慮した電子デバイスなどが該当する」(同社)とし、このようなケースではメッシュ生成がうまくいかないことがあったという。

許容値による回避の限界について
許容値による回避の限界について ※出典:アンシス・ジャパン [クリックで拡大]

 ドローンを例に挙げると、ドローンの「筐体モデル」、内部の「基板(PCB)モデル」、その上に実装されるICチップなどの「パッケージモデル」の3つを、1つの解析モデルとして表現することがある。だが、実際はパッケージモデルであれば数nmオーダー、基板モデルであれば数mmオーダー、筐体モデル(あるいは空間)であれば数cm〜mオーダーとおのおのモデルのスケール感が大きく異なるため、各モデル周辺に適用されるべき許容値はそれぞれ違ってくるはずである。そのため、より正確で高精度な解析を実現するのであれば、本来、それらを加味しなければならないのだが、「それぞれの境界がどこか?」をツール自身に認識させることは難しく、それを人手で行うのも大変だ。その結果、メッシュ生成に失敗したり、解析を諦めたりといった状況が生まれていた。

 この課題を解決するために開発されたのが、Mesh Fusionだ。「Mesh Fusionは、新たなメッシュアルゴリズムと、最新のFEMソルバーの融合によって実現した新しいテクノロジーである」(同社)。

新たなメッシュアルゴリズムと最新のFEMソルバーの融合によって実現した「Ansys HFSS Mesh Fusion」
新たなメッシュアルゴリズムと最新のFEMソルバーの融合によって実現した「Ansys HFSS Mesh Fusion」 ※出典:アンシス・ジャパン [クリックで拡大]

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