LPWAで得た停電予測情報を自動で発電計画に生かす、パナの第7世代エネファーム:製造業IoT
パナソニックは2021年2月17日、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」の戸建て住宅向け新製品を同年4月1日から発売すると発表した。同社のエネファーム製品としては初めて搭載したLPWA(省電力広域ネットワーク)通信機能を経由して、停電リスク情報を自動的に取得して発電計画に生かす。
パナソニックは2021年2月17日、家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」の戸建て住宅向け新製品を同年4月1日から販売すると発表した。同社のエネファーム製品としては初めて搭載したLPWA(省電力広域ネットワーク)通信機能を経由して、停電リスク情報を自動的に取得して発電計画に生かす。
LPWAでネットワーク接続、停電リスク情報などを自動取得
エネファームは、都市ガスやLPガスなど天然ガス中に含まれる水素と空気中の酸素を反応させて電気と熱を同時に生産、供給するコージェネレーションシステムである。パナソニックは家庭向けのエネファーム製品を2009年から発売しており、今回の新製品は第7世代に当たる。
新製品のサイズは1650×400×350mmで、燃料電池ユニットの重量は59kgである。貯湯タンクの容量は、熱源機一体型は130L、熱源機別置型は100L。都市ガス利用時の発電出力は200〜700W、熱出力は247〜998Wであり、天然ガス利用時の発電出力は300〜700W、熱出力は408〜1041Wとなっている。
今回の新製品には大きく分けて2つの特徴がある。1つはセルラー方式のLPWA通信ユニットを搭載して、エネファームをパナソニックのクラウドサーバ経由でネットワークに接続する仕組みを作ったこと。もう1つはウェザーニューズとの連携によって、ネットワークを介して停電リスクや天候情報を取得、それに合わせた発電計画を自動実行する機能だ。
これらの機能を搭載した意図について、パナソニック アプライアンス社 スマートエネルギーシステム事業部 事業部長 燃料電池企画部 部長 浦田隆行氏は「家庭用発電装置としての非常時におけるレジリエンス(復元力)を重視した作りになっている。台風など災害発生時における停電リスクは常にあるが、加えてコロナ禍では人との密集を可能な限り避けるため、身に危険が及ばない範囲で在宅避難を実施したいというニーズがある。在宅避難では熱や電源をいかに家庭で確保するかが課題となるが、非常時にも不安なく利用してもらえる製品として設計した」と説明する。
「停電そなえ発電」で約8日間分の電気を確保
パナソニックのエネファームは以前からネットワークとの接続機能自体は搭載していた。ただ、接続方式が有線LANだったため、家庭でのネットワーク接続率があまり高くなかったという。そこで、無線接続方式に変更することで利便性の向上を狙う。
新製品はネットワークを介して、ウェザーニューズから「停電リスク予測API」を自動的に受信する。停電リスクの予測には、過去の台風発生時における停電情報や風速データを基に開発した独自の推測モデルを用いている。予測を受信した時点でエネファームは「停電そなえ発電」モードに切り替わり、停電中にも電気が使えるようあらかじめ発電を行う。
停電そなえ発電によって最長で約8日間分の電力を確保できる。また、家庭内に設置した「停電時専用コンセント」を通じて最大500Wの電力が使用可能となり、スマートフォンの充電なども行える。また、発電と同時に発生した熱を保存するヒーター給湯機能を使うことで、ガス供給が遮断された場合でも給湯機能やシャワー、ガス温水床暖房も使用できるという。
停電リスク予測APIと併せて、ウェザーニューズからはその日の天候データを伝える「1kmメッシュ天気予報」のデータも受信する。このデータは「おてんき連動」機能に役立てる。同機能は太陽光発電システムを設置した家庭を対象にしており、電力の自家消費を目指す運転計画を作成、実行するというものだ。太陽光発電の発電量が低下する曇りや雨天時にはエネファームは朝方から発電し、十分な電力量を確保できるようにする。一方で、太陽光発電だけで十分な発電量が見込める晴天時には、エネファームは夜間のみ発電する仕組みだ。
お天気連動機能を搭載した背景について、浦田氏は「エネファームの利用者には太陽光発電システムを利用している家庭も多い。しかし、FIT(固定価格買取制度)の期間も既に終了しており、今後は太陽光発電とエネファームの“共存”を考えていく必要がある。新しいエネファームを通じて、利用者の安全快適な暮らしを実現していきたい」と語った。
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