いまさら聞けない 3Dスキャナーの選定基準:デジファブ技術を設計業務でどう生かす?(9)(3/3 ページ)
3Dプリンタや3Dスキャナー、3D CADやCGツールなど、より手軽に安価に利用できるようになってきたデジタルファブリケーション技術に着目し、本格的な設計業務の中で、これらをどのように活用すべきかを提示する連載。第9回は、その特徴や方式の違いなどに触れながら、3Dスキャナーの選定基準について詳しく解説する。
カタログスペックだけでは性能は分からない!?
3Dスキャナーの製品カタログには、一般的に精度、解像度、測定範囲についての記載がありますが、メーカーによって書き方や検査方法に違いがありますので注意が必要です。
(6)精度
基本的に、精度と記載されている場合は、取得する点群が実際の形状とどのくらい合っているか、ということになります。カタログに記載されている精度は、“1ショットの性能を評価するもの”がほとんどです。データを重ね合わせて結合する際に「合成誤差」が生じます。精度としては、単純な精度の他に、点群のバラつき精度、繰り返し測定の精度などがあります。メーカーごとに独自の環境の下でテストを行っているため、カタログのみでの比較の際は注意が必要です。機種選定の際は、実際に3Dスキャンして比較することをオススメします。
(7)解像度
解像度とは、点群がどのくらいの間隔でスキャンされているかの“点間隔”のことです。エッジや細かな形状の再現性の目安になります。レンズなどを交換して解像度を調整できるものもあります。解像度を高くすると取得する点も多くなり、データ量が増加してPCでの作業に高負荷がかかりますが、後からソフトウェア上で点を間引くことも可能です。
(8)測定速度
測定する際のデータの取り込み速度です。1秒当たり何点の座標を取得できるかや、ワンショットの処理時間が記載されているものなどがあります。(6)精度、(7)解像度の設定値によって速度が変わる場合もあります。
(9)測定範囲
測定できる対象物のサイズです。取得したデータをつなぎ合わせていけば大きなものも測定できますが、データをつなぎ合わせていくと誤差が生じますので、できるだけ普段測定したい対象物のサイズに合ったものを選定した方がよいでしょう。推奨の測定可能サイズがカタログに記載されていたり、ワンショットで取得できるサイズが記載されていたりします。
その他、製品カタログには、3Dスキャナーの重量やサイズなどが記載されています。特にハンディータイプの購入を検討する場合は、実際に目で見たり、手に持って触ってみたりして、サイズ感や重さを感じることが重要です。
重要なのは3Dスキャナー機器だけではない!
今回は、3Dスキャナーの選び方について紹介しましたが、実は機器(3Dスキャナー本体)だけでなく、ソフトウェアも非常に重要な要素です。
例えば、3Dスキャンして取得したデータの位置合わせを行うソフトウェアや、検査で利用するのであれば専用の検査ソフトウェアが必要です。さらには、距離や角度を計測したり、設計した3Dデータと現物を3Dスキャンして取得したデータを重ね合わせて品質などを確認したりするソフトウェア、取得したデータを3D CADデータ化するリバースエンジニアリング用のソフトウェアなどが挙げられます。
こうしたソフトウェアはさまざまなメーカーから提供されていますが、それぞれ機能や使い勝手に差があります。3Dスキャナーの導入の際は、機器だけでなく、ソフトウェア選びについても十分に検討してください。今後、本連載の中で3Dスキャナー関連ソフトウェアの選び方についても紹介できたらと思います。お楽しみに! (次回へ続く)
筆者プロフィール
小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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