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IoTデバイスに不可欠な「アンテナ」「無線モジュール」「SIMカード」の役割経験ゼロから始めるIoTデバイス入門(前編)(2/2 ページ)

IoTデバイスの基本的な構成から、必要な認証、デバイス選定までを前後編で解説する本連載。前編では、基本的な構成の中でも、通信に関する機能を持つ「アンテナ」「無線モジュール」「SIMカード」について詳しく解説する。

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通信の要「無線モジュール」

 その名の通り、通信における基本的な処理を行うのが「無線モジュール」です。まさに通信の要となる構成要素です。通常、通信モジュール(モデム)としてパッケージングされていますが、ここではその中身について解説します。中でも必ず必要になる要素が「RF IC」と「べースバンドIC/MAC」になります。

無線モジュールは「RF IC」と「べースバンドIC/MAC」から成る
無線モジュールは「RF IC」と「べースバンドIC/MAC」から成る(クリックで拡大)

高周波アナログ信号を扱う「RF IC」

 アンテナが受信した信号自体はアナログ信号として取り込まれます。このアナログ信号を増幅、整形、変復調してデジタルデータを取り出すための前処理を行うのが「RF IC」の役割であり、最近ではRFフロントエンドとも呼ばれます。IoTデバイスで取り扱う電波は高周波のものも多く、例えばセルラー通信で広く使われているBand1の周波数はおよそ2.1GHz、おなじみのWi-Fiでも2.4GHzあるいは5GHz、5Gで期待がかかるミリ波ともなると28G〜300GHzにものぼります。これらの高周波のノイズを低減し、デジタルデータに変換できる形に変復調を行う重要なICがこの「RF IC」です。

アナログからデジタルへの入り口「ベースバンドIC」

 RF ICで処理された信号は「ベースバンドIC」によって初めてデジタルデータに変換されます。ベースバンドICは高性能のAD/DA変換機能を有し、さらに最近では通信のプロトコルスタックまで実装されているケースがほとんどです。セルラー通信モジュールの場合、後述する「SIMカード」との連携を行うのもこの部分です。ベースバンドICでは、先ほど述べた数GHz以上の高周波をAD/DA変換部でデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号に対して実装されているプロトコルスタックに応じたデジタル変復調や通信の処理が行われます。

 この通信プロトコルに沿ったデジタル変復調時の誤り訂正や、通信処理における再送制御やACK(肯定応答/確認応答)の処理などを行うのがMAC(Media Access Control)部です。MACの処理が無事に終了したところで、ようやく通信のデータ本体にたどり着くことができます。このデータを「HOSTデバイス」に受け渡すところまでがベースバンドICの役割となります。本記事では、HOSTデバイスとベースバンドIC部を分けて記述していますが、例えばスマートフォンなどの高機能モバイルデバイスにおいては、ベースバンド部もHost部も全てワンチップに集約したモデムチップセットと呼ばれるICとして実装されています。

SIMカード≒パスポート?

 セルラー回線を利用した通信に必ず必要になるのが「SIMカード」です。昔に比べて一般的に使われるようになった「SIMカード」とは、Subscriber Identity Module Cardの略称です。セルラー回線に利用するに当たってユーザーは回線事業者と契約をする必要がありますが、その契約者(Subscriber)であることを証明するためのハードウェアがSIMカードです。SIMカードを持つIoTデバイスは、自分の契約している回線事業者の電波をつかむとSIMカードをパスポートのように利用して、自分自身がその回線の契約者であることを認証します。その認証に必要な情報が全て記録されているので、セキュリティ面から見ても非常に重要な部品です。

SIMカードの例
SIMカードの例。ソラコムのグローバル対応SIMカード

高い耐タンパー性

 自らを正しい契約者であることを証明するためのハードウェアとして絶対にされてはならないことの一つが偽造です。SIMカードは、内部に記録されている認証に関する情報などをSIMカードの外から抜き出されないような構造になっています。このように外部からの解析やデータの抜き取りに強い状態となっているかを示す指標を耐タンパー性と呼び、SIMカードは非常に高い耐タンパー性を持つデバイスです。

前編のまとめ

 前編では、セルラー通信を用いたIoTデバイスに必須となる構成要素である「アンテナ」「無線モジュール」「SIMカード」について解説しました。これらの要素を持つデバイスを入手すればセルラー回線を使った通信を行うIoTシステムを構築することが可能です。しかし、このような構成のデバイスを好き勝手に使って通信をしてよいかというとそうではなく、実際にIoTデバイスを使うためには通信機能がその地域の法律に基づいている認証を受けている必要があります。

 次回の後編では、主に日本で無線通信デバイスを使う上で必要な認証について解説し、実プロジェクトにおいてデバイスをどのように選んでいけばいいのかをご紹介する予定です。本稿をきっかけに、少しでもIoTデバイスを身近に感じてもらい、皆さまのIoTプロジェクトが成功に一歩でも近づくような一助となれば幸いです。

筆者プロフィール

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横田 峻(よこた しゅん)ソリューションアーキテクト

株式会社ソラコムでソリューションアーキテクトとして、ソラコムサービス活用やIoTシステム構築、デバイス開発の技術支援を行う。

前職は、株式会社リコーで主に新規事業担当エンジニアとして電子回路設計、各種認証試験、3Dプリンタの活用などのハードウェア開発、プロトタイピングに従事、その後ソフトウェアエンジニアに転向。B2B向けソリューション開発部署でWebサービスのバックエンド開発を行う。

IoT通信プラットフォームSORACOM https://soracom.jp

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