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疲労解析に挑戦、強度設計における繰り返し荷重を評価する実例で学ぶステップアップ設計者CAE(9)(3/4 ページ)

初心者を対象に、ステップアップで「設計者CAE」の実践的なアプローチを学ぶ連載。詳細設計過程における解析事例を題材に、その解析内容と解析結果をどう判断し、設計パラメータに反映するかについて、流れに沿って解説する。第9回は、強度設計において、繰り返し荷重を評価する際に用いられる「疲労解析」を取り上げる。

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疲労解析

 次に疲労解析を行います。ここでは、変動荷重がどのようにかかっているのかを考える必要があります。

変動荷重の応力比と振幅比による表し方
図5 変動荷重の応力比と振幅比による表し方 [クリックで拡大]

 変動荷重には「両振り」と「片振り」があり、片振りには引っ張りと圧縮があり、応力比「R」と変動比「A」によって、その状態を表すことができます。なお、図5のような場合を両振りといい、引っ張りと圧縮が交互に発生します(応力比R=−1、振幅比A=∞)。

片振りの場合の応力比と振幅比
図6 片振りの場合の応力比と振幅比 [クリックで拡大]

 今回の例では、荷重による圧縮状態と無負荷の状態を繰り返すため、片振り応力による繰り返し応力波形、つまり片振り圧縮となります。この応力比は「SOLIDWORKS Simulation 疲労スタディ」のイベント設定のプロパティマネージャーやヘルプメニューにも出てきます。

 また、疲労解析ではSN曲線(カーブ)が必要です。

SN曲線とは
繰り返し荷重により、静的な破壊強度や降伏応力以下の荷重によって生じる応力と破断までの繰り返しの回数の関係を示した曲線。縦軸は応力振幅や応力範囲、または最大応力、横軸は疲労破断するまでの応力繰返し数とし、通常、横軸が対数目盛になったものを使用して、グラフ上にプロットして得られる右下がりの曲線のことをいいます。

 「SOLIDWORKS Simulation」では、材料の弾性係数から作成する方法でSN曲線を求めることが可能です。しかし、これは金属材料が基準となっているため、今回評価する樹脂材料では適切ではありません。よって、SN曲線は外部資料を参考に作成する必要があります。

 なお、今回のような樹脂材料などのSN曲線は、なだらかな曲線形状となり、疲労限度を表す水平部ははっきりと表れないことが多いようです(参考文献:「材料強度要論」/著:榎本信助/養賢堂)。

 SOLIDWORKSでは、平均応力補正理論から補正手法を設定できます。今回のテーマでは、延性材料(※注2)に適した補正手法として「Gerber」を使用します。

※注2:延性材料とは、延びる材料のことで、例えばアルミニウム、プラスチック、ゴムなどが該当する。

 実際に疲労解析の計算を行うと、次のようなメッセージが表示されました。

解析計算時の表示
図7 解析計算時の表示 [クリックで拡大]

 このメッセージは、モデル内の交番応力(※注3)がSN曲線を上回らないことを示しています。

※注3:交番応力とは、大きさが等しく向きが反対の応力が、交互に作用するときの応力のこと。

 この表示の後、他のSN曲線に変更して計算を続けるかどうかのメッセージも表示されましたが、他のSN曲線の入手も困難なため、ひとまずこの解析を中止することとしました。

 疲労破壊を考える際、“亀裂”のメカニズムを考える必要があります。一般的に疲労による亀裂は、引張応力の場の応力の繰返しによって発生するといわれています。圧縮荷重のみがかかる場合でも、応力分布として、引張応力が発生している箇所の存在によっては、疲労が生じることもあり、筆者としてこのメカニズムの複雑性を感じます。

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