破れたバーコードもAIが正確に読み取り、物流検品業務を省力化する「Scandit」:サプライチェーン改革(2/2 ページ)
スイスを拠点とするスタートアップ、ScanditのAIバーコードスキャンソリューションは高速かつ複数のバーコード認識を特徴とする。独自開発のAIで、破れたバーコードなども正確に読み取る。Scanditの導入で物流業務はどう変わるか。Scanditの国内販売代理店である、日立ソリューションズの担当者に話を聞いた。
報告書もスマートフォン上で作成可能
Scanditを使うことで、スマートフォン上での検品作業の報告書も作成できる。報告書には作業のエビデンスとしてスマートフォンのカメラで撮影した画像や、作業者のコメントなども添付可能。コメント作成は音声入力にも対応する。
検品作業の進捗状況はWebブラウザ経由でアクセスできる管理者用ページから確認でき、プロセスの抜け漏れをチェックできる。開始/終了日時や作業時間、作業者コメント、画像などを記載した報告書のデータを指定のExcelテンプレートに流し込み、紙の報告書として出力することも可能だ。
自動化ソリューションよりも低コストかつ導入しやすい
記事冒頭で指摘したように、物流業界は労働力不足の課題を抱えているが、同時に、作業者の教育コストがかさみやすい点もしばしば問題視される。人員の入れ替わりが激しく、新人教育の手間がかかりやすいためだ。
その点Scanditは、日常生活で使い慣れているスマートフォンを用いるため、新人でも操作方法をすぐに覚えやすく、ビジネス継続性を保ちやすいというメリットがある。
なお、上記の問題群に対する解決策としては、Scanditのような省人化ではなく、新設備やロボットなどを導入して根本的に作業自体を自動化するという手法も選択肢としてはあり得る。ただ、奥出氏は「自動化は導入コストや手間がかかる上、現状では全ての検品作業を機械が代替することは難しいという問題がある。一例を挙げると、荷物はそれぞれ荷姿が違うため、画像認識で自動的に処理することが困難だ」と指摘する。
ただ、Scanditも将来的には自動化ソリューションの開発を視野には入れているという。「例えば、Scanditと連携したドローンを飛ばして倉庫内の在庫確認作業を行う、Scanditを固定カメラに搭載して、その下を通過した荷物を自動的に検品チェックする、といった構想はある」(奥出氏)。
メーカー間で広がる共同配送が追い風に?
奥出氏がScanditにとって追い風となる物流業界の動向として注目するのが、メーカーによる「共同配送」の試みである。共同配送とは、複数企業が連携して、同じ配送先の荷物を一括でトラックに積み込んで運搬するというものだ。国内では2020年8月にセブン‐イレブン・ジャパンやファミリーマートなど大手コンビニエンスストアが、2021年1月にはキヤノンやリコー、コニカミノルタなど事務機器メーカー15社が、それぞれ共同配送の実証実験を開始すると発表した。
「共同配送は物流業界における大きなトレンドになる。メーカーの立場からすると、『配送』の過程そのもので他社と差別化することは難しく、それならば他社と共同で取り組んでも問題ないと考えるのは自然な流れだろう。また、物流業者にとっても人手不足が続く中で、トラックの台数を削減して配送効率を高められるので都合が良い。この中で、倉庫内の荷物を瞬時かつ同時に認識できる、Scanditの特長は大いに役立つのではないか」(奥出氏)
Scanditの利用料金は年間サブスクリプション形式で、基本的には導入端末台数に基づいて算出する。最低端末台数は50台程度で、数十万円から導入可能。導入台数が多くなるほど、ボリュームディスカウントが効く料金体系だという。
「物流業務の中でも特に配送業はスマートフォンとバーコードリーダーを2台併用しているケースがある。ただ、多くの場合、スマートフォンは単なる連絡ツールとして運用されている。Scanditのファーストターゲットになり得るのはこうした企業だろう。スマ―トフォン未導入の企業からは、セキュリティリスクや端末の頑丈さについて不安の声を聞くこともあるが、時代の流れでいずれは導入が不可欠になる。大きな需要が見込めるはずだ」(奥出氏)
顧客からはScanditに対する将来的な要望として、「AR機能を活用することで、荷物に貼られた手書き伝票を不要化できるのではないか」という声も寄せられているという。奥出氏はこうした意見もくみ取りつつ、国内展開を進めていくとしている。
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