「Raspberry Pi Pico」が発売、独自開発の40nmマイコン「RP2040」を搭載:組み込み開発ニュース
英国Raspberry Pi財団は、スタンドアロンのマイコンボード「Raspberry Pi Pico(ラズパイピコ)」を開発したと発表した。Armの「Cortex-M0+」をデュアルコアで搭載する、同財団が独自に設計したマイコン「RP2040」を採用しており、価格は4米ドル。
英国Raspberry Pi財団は2021年1月21日(現地時間)、スタンドアロンのマイコンボード「Raspberry Pi Pico」を開発したと発表した。Armの「Cortex-M0+」をデュアルコアで搭載する、同財団が独自に設計したマイコン「RP2040」を採用しており、価格は4米ドル。国内ではスイッチサイエンスやKSYなどが取り扱いを表明しており、税込み価格はスイッチサイエンスが550円、KSYが528円となっている。
これまでのRaspberry Piは、Armの「Cortex-Aシリーズ」を搭載するプロセッサを採用しており、標準OSであるLinuxの「Raspbian(現在はRaspberry Pi OSに名称変更)」などで制御するのが一般的だった。このため、マイコンを用いてアナログ入力や個々のI/Oを低レイテンシで制御するような用途には不向きであり、そういった場合にはマイコンを搭載するコンパニオンボードを用いていた。
今回開発したRaspberry Pi Picoは、Raspberry Piのコンパニオンボードとしてだけでなく、単独のマイコンボードとしても利用可能な製品となっている。
40nmプロセスの2×2mmのシリコンダイにRP2040の機能を詰め込む
Raspberry Pi Picoの最大の特徴は、Raspberry Pi財団が独自に設計したマイコンのRP2040を採用していることだ。RP2040は、動作周波数133MHzのデュアルコア構成のCortex-M0+と、264KBのRAMをオンチップメモリで搭載している。フラッシュメモリは、専用QSPIバスを介して最大16MBをオフチップで利用できる。この他、DMAコントローラーや補間器、整数除算器なども搭載している。入出力インタフェースでは、4本のアナログ入力を含むGPIO×30、UART×2、SPIコントローラー×2、I2Cコントローラー×2、PWMチャネル×16、USB 1.1(ホストおよびデバイスサポート付きのコントローラーおよび PHY)×1、プログラマブルI/O×8などとなっている。これらの機能は、40nmプロセスで製造された2×2mmのシリコンダイと、外形寸法7×7mmの56ピンQFNパッケージに詰め込まれている。
RP2040では、C言語ベースのSDK(ソフトウェア開発キット)やGCC(GNUコンパイラコレクション)ベースのツールチェーンや、プログラミングで広く利用されている「Visual Studio Code」との統合も提供する。初心者やC言語よりも抽象度の高い言語を好む開発者向けには、RP2040向けに移植されたMicroPythonを利用できる。これに合わせて、Pythonのプログラミングに広く用いられている「Thonny IDE」で、RP2040用のMicroPythonがサポートされた。
Cortex-M0+が浮動小数点計算に対応していないため、「Cortex-Mシリーズ」向けの浮動小数点計算ライブラリ「Qfplib」の開発者であるMark Owen氏がRP2040に最適化した浮動小数点計算関数も提供する。この浮動小数点計算関数は、RP2040のユーザー全てにライセンスされる。マイコンベースでの機械学習の推論アプリケーションの実行を容易にするため、Googleの機械学習フレームワークの軽量版「TensorFlow Lite」がRP2040向けにポーティングされるという。
Raspberry Pi Picoは、RP2040の低価格なブレークアウトボードとして設計された。RP2040と2MBのフラッシュメモリを搭載する他、電源ICは1.8〜5.5Vの入力電圧に対応している。これにより、Raspberry Pi Picoの電源として単三電池を2〜3個直列接続したものや、コイン型電池などを電源として利用できる。
また、RP2040はUSBマスストレージブートモードの機能を備えている。Raspberry Pi Picoは、起動時に同モードに入るためのスイッチ(一般的な入力スイッチとしても利用可能)と、動作を示すためのLEDが搭載されている。
Raspberry Pi財団は独自に設計したRP2040の普及に強い意気込みを持っており、今回Raspberry Pi Picoを発表するだけにとどまらず、Adafruit、Arduino、Pimoroni、SparkfunなどのパートナーからもRP2040をシリコンプラットフォームとするさまざまな製品がリリースされている。また、2021年4〜6月期をめどにRP2040の幅広い供給を行える見込みだともしている。
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