トヨタはクルマだけでなく「移動の喜び」も含めて提供、モビリティマーケットで:モビリティサービス
トヨタ自動車は2021年1月20日、オンラインで記者説明会を開き、モビリティサービスを提供する日本国内向けのオンラインプラットフォーム「モビリティマーケット」を2021年4月から開始すると発表した。
トヨタ自動車は2021年1月20日、オンラインで記者説明会を開き、モビリティサービスを提供する日本国内向けのオンラインプラットフォーム「モビリティマーケット」を2021年4月から開始すると発表した。
キャンピングカーや自転車のレンタル、旅行会社、グルメ情報、空港からの送迎サービス、富士スピードウェイ、オフロードコースの運営会社、イベント会社などがモビリティマーケットに参加。「どこかに出掛けたい」という自動車ユーザー向けに、モビリティマーケットを通じて移動手段や出先での過ごし方を提案する。トヨタ自動車とKINTOはモビリティマーケットに参加する企業から「出店料」や売り上げの一部を受け取るが、これらは収益源ではなく運営の最低限のコスト負担という位置付けだ。
現在、モビリティマーケットには約20社の参加が決まっており、モビリティマーケット向けに自動車での移動に関連した独自の製品やサービスを企画している。さらに、30社と提携を議論中だ。
税金や保険、メンテナンスの諸費用を月極の定額にして頭金なしで新車を利用できるサービス「KINTO」のユーザーには、モビリティマーケットで利用できる数万円相当の優待や特典を提供する。KINTOユーザー以外でもモビリティマーケットは利用できる。
モビリティマーケットとは?
モビリティマーケットの狙いについてKINTO 代表取締役社長の小寺信也氏は「KINTOは気軽にクルマと付き合ってほしいという思いでスタートし、購入時の煩わしさや急な出費を取り除く方向でサービスを設計してきた。クルマを手に入れるストレスは解消できたが、クルマのある生活をもっと楽しんでもらうためのサポートが必要だと考えた。クルマで遊びに行くドライブが1番の贅沢だった時代もあったが、今はそうではない。クルマでどこかに行きたいけれど、楽しみ方が点在していて何をどう調べていいか分からないという人が増えているのではないか。モビリティマーケットにさまざまなサービスをそろえるので、どこかに出掛けるときに1つでも試してもらいたい」と語った。
モビリティマーケットでは、(1)キャンピングカーを使ったワーケーションやシェアサイクル、ドライブインシアターなど新たな移動体験(2)モータースポーツの観戦、クルマでしか行けない場所での食事や体験などの非日常なイベント(3)クルマのコーティングや出先での駐車場の予約、車内で聞く音楽、出先で使うカメラなどカーライフに関連したもの(4)クルマ以外の移動手段も組み合わせたMaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などをサービスとして利用すること)や空港への送迎(5)ペーパードライバーや高齢者向けの運転講習、クルマを使う日をピンポイントでカバーする保険といった5つのジャンルでサービスを提供する。
自由な海外旅行が可能になり次第、KINTOユーザーが海外でカーシェアリングを格安もしくは無料で利用できるようにするサービスも開始する。既に欧米中など16の国と地域でKINTOブランドのカーシェアリングを提供しており、モビリティマーケットに並ぶサービスの1つとして取り入れる。
モビリティマーケットで提供する予定のサービスのうち、幾つかはキャンペーンで先行して実施した。キャンピングカーと車中泊スポットをセットで提供するワーケーション体験、クルマでの移動とシェアサイクルを組み合わせて“3密”を回避する京都旅行、レンタカーとドライブインシアター鑑賞をセットにしたエンターテインメント体験を2020年10〜12月で提供。告知サイトに来訪したユニークユーザー数は10万、実際にサービスを利用した参加者の満足度は70%以上だった。
KINTOは2020年に大きく成長
KINTOは2020年に申し込み件数が大きく伸びた。「ハリアー」や「ヤリスクロス」「GRヤリス」といった販売店での売れ行きが好調なモデルを含めた取り扱い車種の拡大、多様な利用期間や乗り換え対応などプランの拡充などが奏功し、2020年の申し込み件数は1万1200件に達した。2019年3月にスタートして以来、累計で1万2300件の申し込みがあった。この申し込み件数と収益について小寺氏は「黒字化の道筋が見えてきたところだ。このペースで台数が伸びていけば台当たりのコストが下り、損益分岐点に手が届きそうだ」と語る。
ユーザーの内訳は法人が16%、個人が84%となっており、個人ユーザーでは20〜30代が4割を占める。マイカーを持つドライバーの年齢層よりも若返りが図れているという。また、自家用車を保有していないユーザーや、トヨタブランド以外のクルマを所有するユーザーを多数取り込んだ。Webサイト経由での申し込みは、販売店での申し込みを大きく上回った。今後もKINTOでは若年層を中心に開拓していく。また契約者が大都市圏に集中しており、地方からの反応が薄いことへの対策が今後の課題になるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 自動車に「ソフトウェアファースト」がもたらす競争力を考える
今後、ソフトウェアが担う役割を拡大していく要因は、クルマがユーザーの手元に来た後に機能を拡充するアップデートを行おうとしている点です。以前は車両購入後のソフトウェア更新というと、ナビゲーションシステムの地図データのアップデートや、クルマの修理で制御プログラムを修正するのが中心でした。スマートフォンで好みのアプリを追加したり、より良い最新の状態にアップデートしたりするようにクルマが変わっていけば、クルマの使い方や価値も大きく変化します。 - 「MaaSは新車販売に劇的なマイナス影響なし」、トヨタ友山氏が語る戦略
トヨタ自動車は2019年2月6日、東京都内で会見を開き、2019年3月期第3四半期(2018年度4〜12月期)の連結決算を発表した。 - トヨタがクルマを売らない新サービス、「気楽に楽しくクルマと付き合って」
トヨタ自動車は2018年11月1日、自動車をサブスクリプション方式で利用できる個人向けサービス「KINTO」を2019年初めから開始すると発表した。税金や自動車保険、車両のメンテナンスといった費用を月極めの定額にし、好きなクルマや乗りたいクルマを好きなだけ利用できるようにする。 - 頭金なし満期後の買い取りなしで自家用車、「プリウス」が月額5万円から
トヨタ自動車は2019年2月5日、自動車をサブスクリプション方式で利用できる個人向けサービスを提供する新会社「KINTO」を設立したと発表した。出資比率はトヨタの完全子会社であるトヨタファイナンシャルサービスが66.6%、住友商事グループの住友三井オートサービスが33.4%となる。 - トヨタの「SKB」はなぜ車内に置くだけでカーシェアできるようになるのか
トヨタ自動車は、東京都内で開催した「コネクティッド戦略説明会」において、車内に置くだけでカーシェアできるようになるデバイス「スマートキーボックス(SKB)」を披露した。 - レンタカーではなくパーソナルモビリティにこだわる、福岡県糸島のワーケーション
ワーケーションを通して、地域や移動の在り方を考えるきっかけに――。近畿日本ツーリスト九州と、シェアオフィスを運営するスマートデザインアソシエーションは、2021年2月末まで福岡県福岡市・糸島市における実証実験ツアーを提供している。