「新車全て電動車」はどうなった? 年末に発表されたグリーン成長戦略をおさらい:カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会(0)(2/4 ページ)
2021年は、グリーン成長戦略の実行に向けて多くの企業が動き出す1年となるでしょう。グリーン成長戦略でどのような目標が掲げられたか、自動車を中心におさらいします。
乗用車は2030年代半ばまでに電動車100%、軽と商用車には“特段の対策”
グリーン成長戦略における自動車の取り組みは、2050年の自動車ライフサイクル全体でカーボンニュートラル化を目指します。2050年に自動車の生産、利用、廃棄を通じたCO2の排出をゼロにすることが目標です。クルマの使い方については、電動車の普及が最大のテーマです。電動車の普及は、電池などの関連技術やサプライチェーンの強化と一体となって推進します。具体的には、遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車の新車販売で電動車100%を実現できるよう、包括的な措置を講じることとしています。商用車についても、乗用車に準じて2021年夏までに検討を進めます。軽自動車と商用車については、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)への転換に特段の対策を講じるとしています。
電動車とインフラの導入拡大にあたっては、燃費規制の活用や公共調達の推進、充電インフラの導入支援や、クルマの買い替え促進などに取り組みます。電動化技術のサプライチェーンやバリューチェーンの強化では、大規模投資の支援、中小サプライヤーの事業転換やデジタル開発基盤の構築支援、ディーラーの電動化対応や事業転換の支援などを検討しています。EVに関しては、公道での充電器の設置、走行中給電技術の研究支援など、進捗に応じて制度や技術基準などを検討します
発電所や工場などから回収したCO2と水素を合成した内燃機関用の合成液体燃料についても、普及拡大や技術開発を支援します。電動化のハードルが高い商用車などに向けて、燃料の効率的な利用だけでなく、燃料自体のカーボンニュートラル化が必要となるためです。現在は実用化に向けた製造プロセスが確立されていませんが、2050年にはガソリン価格以下のコストの実現を目指します。一貫して製造できるプロセスの確立に向けた応用研究も実施します。
蓄電ビジネスの創造にも取り組みます。蓄電池は、自動車の電動化や再生可能エネルギーの普及に必要なカーボンフリーな調整力の要となります。2030年までのできるだけ早い段階で、車載用電池パックの価格は1kWh当たり1万円以下、家庭用蓄電池は1kWh当たり7万円以下を目指すとしています。車載用の価格はEVとガソリンエンジン車の経済性が同等となる水準です。家庭用の価格は、太陽光併設型の蓄電システムが経済性を持てるシステム価格を基準としています。2030年以降は次世代電池の実用化に取り組みます。全固体リチウムイオン電池の本格実用化はもちろん、2035年ごろにはフッ化物電池や亜鉛負極電池など革新型電池の実用化も目指します。
電池の低価格化に向けて、蓄電池や資源、材料などへの大規模な投資支援、定置用蓄電池の導入支援などに取り組みます。研究開発や技術開発では、全固体電池や革新型電池、蓄電池材料の性能向上、蓄電池と材料の高速・高品質で低炭素な生産プロセスの実現、リユースとリサイクル、定置用蓄電池を活用した電力需給の調整などの技術実証に取り組みます。
ルール整備も進めます。蓄電池のライフサイクルでのCO2排出量の見える化や、材料の倫理的調達、リユース促進などに関する国際ルールの標準化、家庭用電池の性能ラベル開発、2024年に解説される調整力市場への参入に向けた制度設計、電気事業法における系統用蓄電池の位置付けの明確化などを推進します。
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