中小製造業にこそ求められる付加価値創造、“望ましい循環”を生み出すポイント:2020年版中小企業白書を読み解く(3)(5/8 ページ)
中小企業の現状を示す「2020年版中小企業白書」において中小製造業も含めた中小企業にとっての「付加価値」の創出の重要性や具体的な取り組みについて3回に分けて考察する本連載だが、最終回となる今回は企業が生み出す「付加価値」の最大化について、付加価値の「創出」と「獲得」の両面から具体的に見ていきたい。
外部連携・オープンイノベーションの推進
無形資産の有効活用の他にも、外部の専門性や人的な資源の活用も中小企業にとっては重要な取り組みである。外部連携については、製造業では研究開発分野やアイデアや発想の補完をする目的で外部連携を活用する企業はまだ少ない一方、同分野や同目的で外部連携を活用する企業は労働生産性の上昇幅が大きい(図20)。対して、非製造業ではいずれの分野でも外部連携を活用する企業は労働生産性の上昇幅が大きい(図21)。
製造業における外部連携の連携先選択の基準とその労働生産性の変化との関係を見ると、製造業では、連携先を選択するに当たり、「技術力の高さ・独自性」「品質の安定性」「対応スピードの速さ」を重視する企業が多い(図22)。一方、労働生産性の変化との関係を見ると、「価格の低さ」「専門性の高さ」「財務の健全性」「量的な面での対応能力(キャパシティー)」を選択する企業で、労働生産性の上昇幅が大きい。
オープンイノベーションと労働生産性との関係については、非製造業の「多対多の連携型」を除いて、全てのタイプでオープンイノベーションに取り組んだ企業が、取り組んでいない企業と比較して、労働生産性の上昇幅が大きい傾向が見られた(図23)。
連携先としては同業種の中小企業が多い一方、異業種や大学と連携する企業において労働生産性の上昇幅が大きい(図24、図25)。
また、オープンイノベーション成功のために、連携企業との信頼関係や明確なゴール設定・共有、意思決定の迅速さなどが重要視されている(図26)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.