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鍵を握るのはインフラ事業分野、東芝が持つAI技術ポートフォリオの“強み”とは組み込み開発 インタビュー(2/3 ページ)

認識精度などの点で「世界トップレベル」のAI技術を多数保有する東芝。これらのAI技術ポートフォリオを、具体的にどのように事業に生かすのか。東芝執行役員の堀修氏と、東芝 研究開発センター 知能化システム研究所 所長の西浦正英氏に話を聞いた。

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正常時データだけからでも異常を検出できるAIを開発

MONOist インフラ分野でのAIソリューション開発において、東芝独自の強みはありますか。

堀氏 インフラ分野でのAI開発では、多分野では見られない特徴的な課題がいくつかある。その1つが、異常値の実データが非常に少ない点である。一般的に機械学習では、正常時のデータだけでなく異常時のデータもAIに学習させる必要がある。しかし、実際の現場でデータに異常値が見られることはまれだ。このため、異常検出の精度向上が難しい。また、データ不足という点以外でも、作成したAIモデルが確実な動作への保証も必要だ。緊急時には最悪の場合設備全体の稼働が停止しかねない。

西浦正英氏(以下、西浦氏) 東芝では技術の研究開発活動を通じて、これらの課題を解決し得るAI技術ポートフォリオの増強に努めている。

 データ不足への対応の一例を挙げると、欠測値を多く含むデータから要因を抽出する回帰モデル「HMLasso(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator with Highly Missing Data)」がある。情報抽出技術の一種であるスパースモデリングに基づき、多くのデータ項目から説明性の高い回帰モデルを構築し、データ全体の50%程度に欠損値が含まれている場合でも、品質低下や歩留まり悪化を引き起こした要因を高精度で抽出する。


データの50%が欠測していても、要因抽出が可能な「HMLasso」*出典:東芝[クリックして拡大]

 正常時の時系列データだけで学習モデルを作成し、インフラ機器の異常発見を行う「OCLTS(One-Class Learning Time-series Shapelets)」という技術もある。正常時のデータから特徴的な波形パターンを抽出して、実際に現場で経時的に取得した波形データとの相違を特徴量と見なして異常/正常を判定するというものだ。


異常時データの取得する必要がない「OCLTS」*出典:東芝[クリックして拡大]

堀氏 AIの品質保証という観点でいうと、独自の「AI品質保証ガイドライン」を策定して社内で活用する取り組みを行っている。同ガイドラインは学習用データ、AIモデル、システム、AIシステムの開発プロセス、顧客の5点について、開発の検討段階からPoC(概念実証)を経て実運用に至るまでの各フェーズで、技術営業や各AI開発担当者などが品質保証のためにチェックすべき項目をまとめている。これによって社内で統一の基準を作り、実運用環境下でも安全かつ安定的に使用できるAI開発に努めている。


「AI品質保証ガイドライン」でインフラ現場での使用に耐え得るAIの品質を目指す*出典:東芝[クリックして拡大]

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