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IntelとAMDを超えたArmのサーバ向けプロセッサ、実はソフトバンクのおかげ?Arm最新動向報告(11)(3/3 ページ)

Armが開催した年次イベント「Arm DevSummit 2020」の発表内容をピックアップする形で同社の最新動向について報告する本連載。今回は、「Neoverseシリーズ」をはじめとするサーバ向けプロセッサの新展開や、「Cortex-Aシリーズ」関連の新IPなどについて紹介する。

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Computing Solutionで車載向けを産業機器向けにも拡大

 ちょっとNeoverse V1/N2を長く説明してしまったが、ここからは他の新IPについて紹介しよう。2020年9月29日に発表された車載および産業機器向けのComputing Solutionだが、もともと車載向けに機能安全関連(具体的にはロックステップやISO 26262関連ドキュメント類など)の機能を追加したバージョンとして展開してきたAE(Automotive Enhancementの略)について、産業機器向けに一般機能安全規格のIEC 61508に対応したバージョンもほしいという顧客が増えてきたことに対応して、この世代からAEで産業機器にも対応することになったとしている。これはCPUである「Cortex-A78AE」のみならず、GPUの「Mali-G78AE」やISPの「Mali-C71AE」も同じであり、今後はこうした形で産業機器向けもカバー範囲に入っていくことになると思われる。

 もっとも、さらにこれを拡充して、例えばIEC 62278(鉄道向け)やISO 15998(土木機械)、あるいはDO-178(航空機)などまで広げてゆくか? というとこれはまた別の話のようだ。少なくとも現状は自動車向けと産業機器向けがターゲット、という話であった。

ChromeBook向けの「Cortex-A78C」はbig.LITTLEを捨てる

 またちょっと後になるが、2020年11月2日には「Cortex-A78C」も発表されている(図12)。こちらは組み込みというよりはコンシューマー、それも主にChromeBookをターゲットにした構成で、big.LITTLEを捨て、bigコア(つまりCortex-A78のみ)を6〜8コア集積可能にするとともに、最大8MBのL3キャッシュを搭載することで性能の底上げを図った構成である。もはやCortex-Aシリーズは、モバイル向けだけではなく、さまざまな用途に幅広く提供するという意思の表れであり、逆に言えばそれだけの性能を実現できるようになった、ということの裏返しともいえる。

図12
図12 「Cortex-A78C」は「Cortex-A78」や「Cortex-A78AE」とは異なり、LITTLEコアとの組み合わせが前提になっていない(クリックで拡大)

 10月7日にはTotal Computeに基づくロードマップがArm DevSummitの中で公開された(図13)。「Matterhorn」というコード名は2019年のArm TechConでお目見えしたもので、これが「Arm v8.6」をフルサポートする最初のコアである。恐らくは、この後に登場する「Makalu」が、Arm v9をサポートする最初のコアになるだろう。今回は具体的な話は出ていないが、恐らくMatterhornは5nm、Makaluは5nm/3nmをターゲットプロセスにしていると考えられる。

図13
図13 Total Computeに基づくロードマップ。2021年にMatterhorn世代、2022年にMakelu世代が登場する計画(クリックで拡大)

 もう一つ重要なのは、Matterhorn世代以降はついに32ビットサポートが廃止されることだろう。もし32ビットコードを走らせる可能性がある場合は、現在のCortex-A78やCortex-X1を引き続き利用する必要があるというわけだ。あるいは、LITTLEコアは引き続き32ビットサポートが継続され、今後は32ビットコードはLITTLEコアでのみ実行されるなんて実装も可能であろう。そもそもbigコアが毎年のように更新されているのに対し、LITTLEコアが引き続き「Cortex-A55」のまま、というのはそろそろ無理があるように思われる。2021年に入ればこちらも何らかの刷新があるかもしれない。

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