超高齢社会の「移動の足」を支えるには? 生きがいになる外出の促進を:交通政策白書2020を読み解く(後編)(3/7 ページ)
本稿では交通政策白書2020の「要旨」を基に、前編ではCOVID-19の影響も含めた交通の動向について確認した。後編では、テーマ章である第2部について、日本における高齢者の生活と生きがいづくり、外出の実態について考察した上で、超高齢社会の「足」を支える施策の最新動向や先進的な取り組みを紹介する。
高齢者の外出を巡る多くの課題
外出は高齢者が生きがいづくりに直結する活動だが、それにまつわる課題もある。高齢者の外出率の全体傾向を見てみると、65歳から74歳までは全年齢と比べても遜色ない外出率であり、特に休日は全年齢の平均を上回っているが、75歳を超えると外出率は急激に落ち込み、特に、75歳以上の女性の休日における外出率は4割未満で、およそ3人に1人しか外出していない(図12)。
高齢者の外出率は、過去20年にわたり増加基調であったところ、2015年の全国都市交通特性調査において、初めて減少に転じた(図13)。これは、高齢者の外出に占める買物や食事の割合が大きい中、近年のB2C電子商取引の増加などに起因して、外出率が低下していることが推測できる。今後もこのような傾向は継続する可能性が高い(図14、図15)。
また、運転免許の有無、自家用車の有無により高齢者の外出率には大きな開きがあり、運転免許がない場合および自家用車を保有していない場合には外出率が約4割まで落ち込み、特に過疎地域では約3割にまで落ち込む(図16、図17)。
全死亡事故件数に占める75歳以上の高齢運転手の死亡事故件数の割合が増加傾向にある中、運転免許返納者は大きく増加しており、高齢者の移動の「足」をいかに確保していくかが深刻な課題となっている(図18、図19、図20)。
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