超高齢社会の「移動の足」を支えるには? 生きがいになる外出の促進を:交通政策白書2020を読み解く(後編)(4/7 ページ)
本稿では交通政策白書2020の「要旨」を基に、前編ではCOVID-19の影響も含めた交通の動向について確認した。後編では、テーマ章である第2部について、日本における高齢者の生活と生きがいづくり、外出の実態について考察した上で、超高齢社会の「足」を支える施策の最新動向や先進的な取り組みを紹介する。
さらには、自らの運転に頼らない移動の受け皿となるべきバスやタクシーといった地域公共交通の担い手も高齢化が進んでおり、高齢化の進展は移動手段の供給の面にも影響を及ぼしている。自動車運送事業は、全産業と比較して労働時間が長い一方で年間所得額は低く、若年層が就業を敬遠していることもあり、平均年齢が全産業に比べて高い。特にバスとタクシーの運転手の高齢化は深刻であり、過去15年でバスは6.1歳、タクシーは5.6歳平均年齢が上昇しており、これは全産業の2.7歳と比較しても大きくなっている(図21、図22)。
交通政策の動向
交通白書2020では、2019年6月の「昨今の事故情勢を踏まえた交通安全対策に関する関係閣僚会議」において決定された「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」にて取り組むこととしている施策を含め、実際に講じられつつある施策や先進的な取り組みとして、下記の4つを紹介している。
- 高齢者の安全運転を支える対策
- 高齢化が進む地域での輸送サービスの維持確保の促進
- 高齢者向けの新たなモビリティサービスの導入
- 高齢者の移動を支える環境整備
これらの主な内容について、それぞれ見ていきたい。
高齢者の安全運転を支える対策
安全運転サポート車の普及促進
「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」を受けて、世界に先駆けて令和3年11月以降の国産新モデルから段階的に「衝突被害軽減ブレーキ」の装着を義務付けることとした他、「対歩行者の衝突被害軽減ブレーキ」および「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」の性能認定制度の導入、後付けのペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能認定制度の創設および自動速度制御装置(ISA:Intelligent Speed Assistance)に関する技術的要件などのガイドラインの策定を行った。また65歳以上の高齢運転者に対し、令和元年度補正予算により「サポカー補助金」を交付している(図23、図24)。
限定条件付免許制度の実現
2020年6月、第201回国会において、高齢運転者対策の充実・強化を図るための規定の整備などを内容とする道路交通法の一部を改正する法律が成立した。この改正では、75歳以上の運転免許を受けた者で一定の要件に該当するものは、運転免許証の更新時に、運転技能検査を受けていなければならないこととするとともに、都道府県公安委員会は、運転技能検査の結果により運転免許証の更新をしないことができることとした。
また、運転免許を受けた者は、都道府県公安委員会に、運転することができる自動車を一定の機能を有する自動車に限定する条件その他の一定の条件を、自身の運転免許に付することを申請することができることとした。
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