生産性の低い企業は退出へ、中小企業の新陳代謝と見えてきた多様性:2020年版中小企業白書を読み解く(2)(2/5 ページ)
中小企業の現状を示す「2020年版中小企業白書」において中小製造業も含めた中小企業にとっての「付加価値」の創出の重要性や具体的な取り組みについて3回に分けて考察する本連載。第2回は中小企業の労働生産性や新陳代謝、中小企業の多様性について紹介する。
大企業を下回る中小企業の労働生産性
次に、労働生産性の分布状況について企業規模別、業種別に比較する。図4は、中小企業と大企業の労働生産性の業種別平均(縦軸)と業種別従業者割合(横軸)を示したものだが、中小企業の労働生産性の平均値は大企業の労働生産性の平均値をおおむね下回っている。
企業規模別に上位10%、中央値、下位10%の労働生産性の水準を示したものや、企業規模別・業種別に労働生産性の中央値を比較した結果からも、業種に関わらず企業規模が大きくなるにつれて労働生産性が高くなることが見て取れる(図5、6)。一方で、図5からは小規模企業の上位10%の水準が大企業の中央値を上回っていることも分かり、企業規模が小さくても高い労働生産性を保持している企業が一定程度存在することが分かる。将来的に人口減少に直面する日本にとって、こうした労働生産性の高い企業を増やしていくことが重要になると中小企業白書2020は指摘する。
なお、中小企業白書2020は、これら労働生産性の規模間格差や企業間格差は業種によっても大きく異なると述べている。図7は、大企業と小規模企業の労働生産性の差分を用いて、労働生産性の規模間格差を業種別に示したものだが、これを見ると「建設業」や「製造業」「情報通信業」「卸売業」では企業規模間での差が大きく、「運輸業、郵便業」や「小売業」「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」では企業規模格差は比較的小さい。後者の業種については、個別企業の経営努力や企業規模の拡大のみによる労働生産性の大幅な向上は容易ではない可能性もあるとしている。
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