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日本は「自動車産業After2050」を考えるときではないか和田憲一郎の電動化新時代!(39)(2/3 ページ)

各国の規制は既に2050年までほぼ固まっており、これが早まることはあっても、後退することはないだろう。海外の自動車メーカーもこれに沿って車種ラインアップや事業計画を見直していると予想される。そう考えると、他社より一歩先んずるためには、まだ固まっていない、不透明な2050年以降を想定していくことが必要ではないだろうか。まさに日本が生き残るための「自動車産業After2050」である。

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2050年以降の真空地帯をどう読むか

 各国規制でも2050年以降の動向については語られていない。またこの時点になると、各国市場もゼロエミッション車となっており、そこから先はある意味、真空地帯といえる。未来の話なので、見当もつかないと思われる方もいるかもしれないが、現時点で幾つか推定できることもある。あくまで筆者の考えであるが、その時起こると思われる現象を、キーワードとして3つ挙げてみたい。

(1)自動車動態の変化

 全てがゼロエミッション車となると、好むと好まざるにかかわらず、2050年以降は乗用車だけでなく、バスやトラック、タクシー、鉄道など多くの分野において自動運転車が普及するだろう。

 「普及」を現時点でイメージしやすいのは、自動運転車のみが走行できる新都市・中国の雄安新区だ。雄安新区は、日本の最小都道府県である香川県とほぼ同じ面積を有し、第1次完成となる2035年の時点で人口100万人を計画している。着々と建設を推進しており、2050年ごろには目標とする人口200万〜250万人が自動運転車のみで生活をすることとなる。日本国内で比べると、札幌市の人口が197万人、名古屋市の人口が232万人だ。

 このような規模の人口で自動運転車を利用するとき、誰が自動運転車をコントロールするかと考えると、途中で停止した場合や事故発生時の対応、日々の充電など、さまざまな要素が絡むことから、おそらく全体をコントロールするサービス企業に任せることが多くなるのではないか。このサービス企業は、自動車メーカーが運営する場合もあるかもしれないが、モノづくりとはやや分野が異なり、IT企業がその役目を担う可能性が高い。中国の例でいえば、杭州で都市交通全体をコントロールしているのはアリババ(アリクラウド)で、深センで同様な事業を展開しているのはテンセントである。

 乗用車や移動専用車で自動運転が多くなると、ユーザーはあまりクルマのスタイリングに関心を持たなくなるだろう。何人乗りか、キャリーバッグが幾つ積めるかなどが重視される。そうなると自動車メーカーはユニークなクルマを製造するか、このような汎用(はんよう)性の高いクルマを製造するかに分かれる。いずれにしても自動車メーカーの数は激減し、1社当たりの生産数や販売数は増加する。

 また、バスやトラック、タクシーなど旅客・物流関連のドライバーも激減する。特に高速道路などで自動運転車レーンを設定すると、市街地では手動運転でも、高速道路は完全自動運転ということも起こり得る。バスやトラックなどでも、高速道路の始点までは手動運転で来て、そこからは無人の完全自動運転に任せることも可能になる。いずれにしても、ドライバーの職業は大幅減少し、産業構造上、大きな変化となるであろう。


図表3:推定される自動車動態の変化(クリックして拡大) 出典:出典:日本電動化研究所

(2)PHEVの立ち位置変化

 もう1つの懸念はPHEVの立ち位置の変化である。これまでEVは電池容量に限りがあり、走行距離に対して不安が伴うことから、それを補う技術としてPHEVが開発されてきた。しかし、構造が複雑であり、かつ近年はZEV規制などを受けてモーターのみで走行できるEV走行距離を長くすることが求められた結果、大型の電池を搭載する例が増えてきた。EVにかなり近づいたといえる。

 また環境規制では、ゼロエミッション車の一部、もしくは新エネルギー車のカテゴリーとして捉えられてきた。しかし、2035年のZEV規制や欧州各国におけるガソリンエンジン車・ディーゼルエンジン車の販売規制を考えると、筆者の推測であるが、2050年前後にはZEV規制や新エネルギー車の対象車から外されていくように思える。

 さらに、2035年前後からガソリンスタンドの廃業が相次ぎ、PHEVの減少に拍車を掛けるであろう。ユーザーも将来のガソリンスタンド減少を考えると、購入候補から外してしまうのではないか。現在PHEV開発に注力している企業は、今後PHEV存続の危機に対して覚悟が必要であろう。

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