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日本版Formnext、多彩な材料に対応する3Dプリンタが集結Formnext Forum Tokyo 2020(1/3 ページ)

2020年9月24〜25日の2日間、ドイツ・フランクフルト発の積層造形技術の見本市「Formnext」の日本版といえる「フォームネクストフォーラム 東京 2020」が東京都内で開催された。本稿では、展示ブースの模様を中心に同イベントの様子をレポートする。

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 2020年9月24〜25日の2日間、ドイツ・フランクフルト発の積層造形技術の見本市「Formnext」の日本版といえる「フォームネクストフォーラム 東京 2020(Formnext Forum Tokyo 2020)」が東京都内で開催された。コロナ禍において、少しずつ実地での展示会イベントの開催が増えてきているが、同展示会もその1つだ。

 「客足は?」といえば、“閑古鳥が鳴く”とまではいかないものの、正直なところ、いまひとつの印象だった。今回、感染者数がやや高止まり気味である東京開催であり、遠方からの来訪も少ないと思われるため、致し方ない状態といえる。ただ、そうした状況の中で参加した来場者の目的意識は非常に高く、各ブースで熱心に説明を聞く様子が多く見られた(※注1)。

※注1:同イベントは、日本展示会協会の「COVID-19感染拡大予防ガイドライン」と東京都立産業貿易センターの「新型コロナウイルス感染防止の取組みと主催者向けガイドライン」に従い、感染対策に十分配慮した上で開催された。

 本稿では、展示ブースの模様を中心に、同イベントの様子をレポートする。

「銅」を3Dプリントする“緑のレーザー”:TRUMPF

 創業1923年、機械工場を起源とするドイツのTRUMPF(トルンプ)。現在はインダストリー4.0の中心地らしく、スマートファクトリー(スマート工場)向けのプラットフォームやソフトウェア、コンサルティングサービスを展開している。

 3Dプリンタも、スマートファクトリーの実現にとって重要なツールの1つである。今回はトルンプの日本法人が、銅や合金銅、高反射性の貴金属を精度良く造形できる金属3Dプリンタ「TruPrint 1000 Green Edition」を紹介した。

「TruPrint 1000 Green Edition」による造形物(インダクター、素材は純銅)
画像1 「TruPrint 1000 Green Edition」による造形物(インダクター、素材は純銅) [クリックで拡大]

 銅の素材色は赤味を帯びているが故に、一般的な金属3Dプリンタが採用する赤色のレーザー(赤外線)では反射してしまい、うまく造形できないという課題があった。これに対し、TruPrint 1000 Green Editionでは、緑色のレーザー(波長515nmのレーザー光)を採用することで、レーザー光の吸収率を大幅に向上させ、銅や銅合金の造形に対応した。

 これが“Green Edition”という名の由来である。銅は導電性や熱伝導性に優れた金属であり、半導体の他、さまざまな分野で活用されてきた。これまで従来工法しか選択できなかった銅を3Dプリント(積層造形)できれば、その可能性はさらに広がるはずだ。

 また、トルンプは「ポルシェ 911(Porsche 911)」の高性能モデルである「ポルシェ 911 GT2 RS(Porsche 911 GT2 RS)」のピストンも金属3Dプリンタで開発している。この3Dプリンタ製ピストンは試作品ではなく、最終製品に搭載されているとのことだ。展示ブースで紹介していた動画を以下に掲載しておく。

動画1 Porsche x Mahle and Trumpf: 3D Printing ※出典:Porsche

 通常、ピストンは鋳造で作られるため、その形状は“金型の制約”に縛られることになる。そこで、トルンプの金属3Dプリンタ「TruPrint 5000」を活用。3Dプリント技術により生み出されたこのピストンは、軽量化と強度を両立できる形状に最適化され、ピストンクラウンには冷却ダクトまで備わっている。また、ピストンにかかる極めて高い負荷に耐えられる強度を実現しながら、鋳造品と比較して約10%の軽量化を果たし、最大出力700PSのビターボ(ツインターボ)エンジンから、さらに30PSの出力を得ることに成功したという。

液体シリコーンで造形できる3Dプリンタ:ホッティーポリマー

 戦後、ゴム履物のメーカーとして創業した(旧)堀田ゴム工業を前身とするホッティーポリマー。今回、同社が展示していたのは、シリコーンで造形できる3Dプリンタ「L320」(German RepRap)だ。今回、3Dプリンタの実機は持ち込んでおらず、造形後のサンプル品のみ展示していた。

「L320」による造形サンプル。左下に手袋のような造形物があるが、袋とじにするには、条件出しで少々コツがいるという
画像2 「L320」による造形サンプル。左下に手袋のような造形物があるが、袋とじにするには、条件出しで少々コツがいるという [クリックで拡大]

 L320の使用素材は液体シリコーンゴム(LSR)で、自動車や電機、半導体系の他に、医療や化粧品などにも対応でき、適用分野は幅広い。

 液体シリコーンゴムのような低強度材料を3Dプリンタで造形するのは非常に難しく、その課題を解消したのが「液体積層造形法(LAM:Liquid Additive Manufacturing)」と呼ばれる造形プロセスだ。LAMにより、液体シリコーンゴムを射出成形に匹敵する精度で造形できる上、射出成形では実現不可能な中空やラティス、ハニカムを取り入れた形状も作成できる。透過率の高い(透明な)造形物も作成可能だ。

ダウの液状シリコーンゴムで造形したサンプル。穴はどこにもなく、薄肉の膜で完全に閉じられていて、中が空洞になっている
画像3 ダウの液状シリコーンゴムで造形したサンプル。穴はどこにもなく、薄肉の膜で完全に閉じられていて、中が空洞になっている [クリックで拡大]

 3Dプリンタによる製造の可能性を広げるL320だが、一般的な3Dプリンタの扱いに慣れたユーザーでも、使いこなすにはノウハウとコツを要するという。こうしたサポート面についてはホッティーポリマーが担当し、オリックス・レンテックを介しての装置レンタルも行っているという。

数時間の造形がわずか20分で、XYZの高速DLP:イグアス

XYZ PrintingのDLP方式3Dプリンタ「PartPro120 xP」
画像4 XYZ PrintingのDLP方式3Dプリンタ「PartPro120 xP」 [クリックで拡大]

 ソフトウェアやハードウェアなどを取り扱う技術系商社のイグアス。MONOistの読者にとっては「3Dプリンタの商社」としてなじみ深いだろう。今回の展示では、同社が販売代理店として取り扱う3D SystemsとXYZ Printingの製品実機を訴求。中でも、大型の装置を前面にアピールしていた。注目は、2020年10月発売予定のDLP(Digital Light Processing)方式3Dプリンタ「PartPro120 xP」(XYZ Printing)だ。

 最大の特長は「スピード」で、1分間に5mmの積層が可能。従来製品で3〜4時間かかっていた造形が20分程度で完了するとしている。速度の秘密は、XYZ Printingの独自開発技術「UFF(Ultra Fast Film)」にある。レジンタンクの底部に、超高速フィルム(Ultra Fast Film)を採用することで、レジンタンクの底部から造形パーツの積層面を引き離す距離を極限まで短く(0.1mm程度)し、わずかな力で剥離できるようにしたことで、プラットフォームを高速に動かすことができる。

 発表以来、問い合わせも多く、特に玩具や消費財系メーカーからの関心が高いという。コロナ禍の外出自粛/制限などを受け、巣ごもり需要が増していることも、同製品への注目を後押ししているとのことだ。

「PartPro120 xP」による造形物
画像5 「PartPro120 xP」による造形物 [クリックで拡大]

 3Dプリンタブームの最中では、廉価なデスクトップ機が注目されたXYZ Printingだが、現在は産業向け3Dプリンタの開発にも力を入れ、ラインアップを拡充している。価格についても、先行する大手3Dプリンタメーカーの製品と比較するとかなり安価に設定されており、追い上げを狙う。また、材料についても自社純正品に強くこだわることなく、外部の材料メーカーと協業した材料開発にも力を注いでいるとのことだ。

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