果物や野菜をつかむグリッパー向けの接触センサーユニット、配線構造は伸縮自在:組み込み開発ニュース
大日本印刷は、果物や野菜など柔らかいものをつかむのに最適な柔軟な構造を持つ産業用ロボットのグリッパー向けに、伸縮自在な配線構造を持つ「接触センサーユニット」を開発したと発表した。
大日本印刷は2020年10月9日、果物や野菜など柔らかいものをつかむのに最適な柔軟な構造を持つ産業用ロボットのグリッパー向けに、伸縮自在な配線構造を持つ「接触センサーユニット」を開発したと発表した。
製造業などで課題となっている労働力不足に対応するため、モノをつかんで移動させるピッキング作業を自動化できる産業用ロボットの導入が進みつつある。中でも、果物や野菜などを扱う食品分野では、ロボットがつかんだ時に表面に傷が付いて傷みが生じないように、樹脂などを用いた柔軟な構造を採用するとともに、モノを握って持ち上げる「把持力」を検出する接触センサーを組み込んだグリッパーの採用が検討されている。
しかし、接触センサーをつなぐ配線ケーブルがピッキング作業の邪魔になり、誤ってケーブルをつかんでしまい断線するなどの課題があった。また、作業の邪魔にならないようグリッパーに直接ケーブルを装着する場合は、柔軟な構造の中に伸縮性のないケーブルが入ることで断線を起こすこともあった。
伸縮性ハイブリッド電子実装技術を採用
今回発表した接触センサーユニットは、大日本印刷独自の「伸縮性ハイブリッド電子実装技術」を活用した伸縮自在な配線構造によって、柔軟性のあるソフトなグリッパーに直接装着しても断線が発生しないという特徴を持つ。
伸縮性ハイブリッド電子実装技術は、縦横の方向や曲面の形状で収縮する物の動きに対して自由に追従できる電子回路基板を実現する技術だ。柔軟な基材を曲げ伸ばししても抵抗値が変わらない電極配線を可能とし、剛直な部品を電子回路基板上に実装しても伸縮時に断線しにくい工夫を盛り込んでいる。同技術は、薄型で伸縮自在なスキンディスプレイの開発にも採用されたことなどで知られる。
接触センサーユニットは、伸縮配線と感圧ゴムを組み合わせた構造になっており、全体の厚みは約2mm。配線材料は銅を採用した。130%までの伸縮動作について、食品ピッキングに必要とされる100万回程度繰り返しても、電気的、機械的特性が損なわれないことを確認している。
一般的な接触センサーの方式には静電容量式と感圧式があるが、静電容量式は伸縮時の配線の容量変化を考慮して補正する必要があり駆動回路が複雑化する可能性が高いため、配線の容量変化を考慮、補正する必要のない、感圧ゴムを用いる感圧式を採用した。
なお、接触センサーユニットの開発は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の研究テーマ「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤」の取り組みとして、産業技術総合研究所(産総研)、立命館大学と連携し、ソフトロボティクス分野における有効性の実証研究として開発したものとなる。
今後は、NEDOや産総研、立命館大学との連携を通じて、把持力の検出だけではなく、ロボットのフィードバック制御や駆動においてもさらなる精度向上を図り、よりきめ細かなロボット制御を実現し、労働生産性の低い産業への導入を目指すとしている。
接触センサーユニットは、2020年10月20〜23日にオンラインで開催される展示会「CEATEC 2020 ONLINE」の産業技術総合研究所ブース内で展示される予定だ。
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