FA機器メーカーから製造プラットフォーマーへ、ロックウェルの目指す新たな姿:FAインタビュー(1/2 ページ)
FA用制御機器のグローバル企業である米Rockwell Automationは、スマートファクトリー化などの流れの中で、ITシステムなどを組み合わせたモノづくりプラットフォーマーへと役割を変化させつつあり、日本でもこれらの取り組みを本格的に広げていく方針を示す。日本での取り組みについて、ロックウェル オートメーション ジャパン 代表取締役社長の矢田智巳氏と、同社A&S, Power Control&IC Regional Managerの吉田高志氏に話を聞いた。
スマートファクトリー化などモノづくりの在り方がデジタル技術を組み合わせた形に変化する中で、FA機器メーカーもその立ち位置を変化させる取り組みを進める動きが広がっている。米Rockwell Automation(以下、ロックウェル オートメーション)は「コネクテッドエンタープライズ」というコンセプトを訴え、モノづくりプラットフォーマーとして、ハードウェアからソフトウェアまでトータルソリューションを提供する形に転身を図っている。
こうした取り組みを日本でも本格的に拡大し、スマートファクトリー化を含む製造業のDX(デジタル変革)に貢献していく方針だ。日本での取り組みについてロックウェル オートメーション ジャパン 代表取締役社長に2020年1月に就任した矢田智巳氏と、同社A&S, Power Control&IC Regional Managerの吉田高志氏に話を聞いた。
「コネクテッドエンタープライズ」を展開
MONOist ロックウェル オートメーションといえば、グローバルにおけるFA機器の主要企業の一角だと思いますが、現在はIT領域にも力を入れています。日本ではどのような取り組みを進めているのでしょうか。
矢田氏 企業内のデータやシステムを結ぶ「コネクテッドエンタープライズ」というコンセプトをグローバルで提唱し、デジタル統合によるプラットフォーム戦略へと踏み出している状況だ。製造現場からのデータ取得については、以前から展開しているFA機器により行う。一方で、「FactoryTalk」でMES(製造実行システム)など現場寄りのITシステムの強化を進めている。また、ERP(Enterprise Resource Planning)システムなど上位システムや関連システムとの連携についてはパートナーとの「デジタルパートナープログラム」により、PTCやAnsys、アクセンチュア、マイクロソフト、EPLANなどとの連携を進めている。現場の各種機器から総合的なシステムまでを一貫して提供できる姿を描いている。
特にPTCとは出資を含めた戦略的パートナーシップを結んでおり、「FactoryTalk」にPTCが展開するIoTプラットフォーム「ThingWorx」の機能を盛り込むなど、システム連携を強化しているところだ。また、PLMなどエンジニアリングチェーンとの連携もしやすい環境を作り出している。日本では、プラットフォーム提案の本格化はまだこれからというところだが、MESなどの提供は一部で進んでおり、既に実績は出てきている。
吉田氏 FA機器は各地域によって強い企業がある状況が生まれているが、ロックウェル オートメーションは北米で強みを持っている。ロックウェル オートメーション ジャパンとしても、従来は北米地域に進出している日本企業のFA機器の展開が売上高の大きな比率を占めており、現在も比率そのものは高い状況だ。しかし、相談ベースでは、“FA機器のみ”の相談というのは少なくなっており、ソフトウェアも含めた総合的な相談が増えてきている。スマートファクトリー化などを含めて、FA機器単体で解決できる問題よりも、もっと大きな枠組みで解決策を求めるケースが増えている。そうしたニーズに応えていく必要があると考えている。
製造現場にかかわる領域のプラットフォーマーに
MONOist どの領域までロックウェル オートメーションでカバーしていくつもりでしょうか。
矢田氏 システム面では、ERPなどの上位システムに連結する部分まではロックウェル オートメーションでカバーする。それ以上のさまざまな業務システムについては、パートナーシップを生かしていくという考えだ。製造現場の各種システムと上位システムとの情報連携については、PTCの「ThingWorx」の機能を組み込んだソリューションを展開している。製造現場に関わる部分をハードウェアからデータまで一元的に提供できるプラットフォーマーを目指す。
MONOist 従来とは商流や販売手法、必要なスキルなども変化が求められると思いますが、どういう対応を進めているのでしょうか。
矢田氏 販売網としては、日本企業への導入を支えてもらえる大手のシステムインテグレーターとのパートナーシップを模索している。一方で日本の要求実装などをグローバルで実現するパートナーなども開拓しているところだ。また、ロックウェル オートメーション ジャパンとしても、ソフトウェアの営業担当者や技術担当者は増員を進めている。さらにスマートファクトリーなどの多岐にわたるシステム導入には、導入前のコンサルテーションが欠かせないが、コンサルティングサービスなども新たに展開する予定だ。
日本でも最低限のシステム導入を進められる体制は整いつつあるが、他のシステムとの連携など本格的な展開はまさに新年度(2020年10月)からという形になる。また、コンサルティングサービスについては2021年開始予定で準備している。
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