EVの設計から検証を仮想環境で効率化、シノプシスが新ソリューションを発表:車載ソフトウェア
シノプシスは2020年8月12日、EV向けの設計、開発、検証のための仮想プロトタイピング統合ソリューションを提供開始したと発表した。パワーエレクトロニクスや車載用ソフトウェアの性能や機能安全の検証が行えるため、開発の効率化につながる。
シノプシスは2020年8月12日(米国現地時間)、EV(Electric Vehicle:電気自動車)に搭載する電子部品やソフトウェアの設計、開発、検証のための仮想プロトタイピング統合ソリューションを提供開始したことを発表した。同ソリューションの活用により、車載用部品やアプリケーションが完成する前から、性能や機能安全の検証が行えるため、開発の効率化を図れる。
仮想プロトタイピング統合ソリューションは、シノプシスが開発した既存の開発ツールをベースに構成されている。ベースとなったツールは、パワーエレクトロニクスなど物理システムの設計やモデリング用のプラットフォーム「SaberRD」と、組み込みソフトウェアの統合開発環境「Virtualizer」、ECU(Engine Control Unit:エンジンコントロールユニット)の仮想開発プラットフォーム「Silver」、車両システムの仮想テスト環境「TestWeaver」の4つである。
これらのツールをEV開発に最適な仕様にするため、いくつかの機能強化を施した。パワーエレクトロニクス機器やマイクロコントローラー、AUTOSAR(オートザー)コンポーネントのEVモデルライブラリを追加した他、高抽象度や高忠実度な解析を可能にするマルチレベルシミュレーションを搭載した。また、機能安全テストやバリデーション解析、カバレッジ解析、タスクキャリブレーションなどのデバッグや解析、テストを実行する機能に加えて、ツール間接続用のFMI(Functional Mockup Interface)やAPI(Application Programming Interface)にも対応する。
EVの開発者は仮想プロトタイピング統合ソリューションの活用によって、早期の設計空間探索や電子部品の選定、プロトタイプ製作、モデリングの準備、ソフトウェアの開発と統合、機能安全テスト、プロトコルの安全性検証などの作業過程を効率化し、迅速に開発を進められるようになる。
シノプシス エンジニアリング担当副社長のトム・デ・シュター(Tom De Schutter)氏は「EV開発に携わる当社の顧客企業は、バッテリー管理システムの最適化や複雑化したソフトウェアの処理、機能安全の確保など、EV開発におけるいくつかの課題を抱えている。こうした課題を解決すべく、当社は仮想プロトタイピング技術の開発に対して長年投資を続けており、開発コストの削減などを実現する、アプリケーションにフォーカスした包括的な開発ソリューションの提供が可能になった」とコメントした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 車両の挙動をブラウザ上で再現する「カーエミュレーター」とは
自動車向けのアプリを開発する場合は、サービスのデジタルモックアップを作成し、実際の車両を用いてテストを行います。これに対し、仮想環境での自動車エミュレーターを用いて車両がどのように応答するかを視覚化し、挙動をテストできるようにしました。その「カーエミュレーター」について紹介します。 - そのアーキテクチャは要求仕様を満たす? シミュレーションで処理性能を検証
日本シノプシスは「人とくるまのテクノロジー展2017」において、SoC(System on Chip)のマルチコア アーキテクチャの性能をシミュレーションで検討する「Platform Architect MCO」の新機能「タスクグラフジェネレーター」を紹介した。 - パナソニックが自動車HMI設計にVRシミュレーターを活用、仕様変更件数を3割削減
パナソニック オートモティブ社は、自動車用コックピットのHMI(Human Machine Interface)の検証作業を効率化するために開発したVR(仮想現実)シミュレーターを披露。自動車メーカー向けのHMI設計で仕様変更件数を約30%削減するなどの効果が得られたという。 - アウディが新車の生産プロセスをVRで検証、ドイツとメキシコのやりとりにも活用
Audi(アウディ)は2019年7月19日、電気自動車(EV)「e-tron GT」を生産するネッカーズルム工場のにおいて、組み立てプロセスと関連する物流プロセスの検証を全てVR(仮想現実)上で行ったと発表した。VR活用により拠点を超えたコラボレーションが容易になり、リソースの節約も達成できたとしている。生産設備や建屋まで3次元スキャンすることが生産ラインのVR化の基盤になったという。 - コンセプトカーそのままに、日産の新型EV「アリア」は2021年発売
日産自動車は2020年7月15日、電気自動車(EV)の新モデル「アリア」を発表した。2019年10月に東京モーターショーで披露した「アリア コンセプト」の内外装をなるべく変えずに製品化することを意識した。 - シャープ製ソーラーパネルをEVに、外部電源からの充電ゼロも可能に
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とシャープは2020年7月6日、EV(電気自動車)用太陽電池パネルを製作したと発表した。