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1万℃の高熱から貴重なサンプルを守れ!〜再突入カプセルの仕組み【前編】〜次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(17)(3/4 ページ)

いよいよ、小惑星探査機「はやぶさ2」が帰ってくる。2回のタッチダウンで取得したサンプルを地球に送り届ける最後の関門となるのが地球大気圏への再突入だ。そのために使われる「再突入カプセル」とは、どのような装置なのだろうか。

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外は超高温なのに中はほどほど

 大気圏への再突入において、大きな問題となるのは高熱からどうやって身を守るか、ということだ。低軌道の周回衛星などは、この高熱を利用して焼却処分しているのだが、もし何も対策をしなければ、このように燃え尽きてしまう。

 この高熱は、「空力加熱」により発生する。気体は圧縮すると温度が上がる性質がある。再突入カプセルは、地球大気に秒速12kmという超高速で突っ込むため、正面の空気は横に逃げる間もなく圧縮される。これにより、カプセル前面の気体の温度は、1万℃を超えると考えられている。

空力加熱の概念図
空力加熱の概念図。空気が圧縮されることで高温になる 出典:JAXA

 空力加熱は「摩擦熱」と間違いやすいのだが、両者は異なる現象なので注意してほしい。カプセルの温度上昇には、摩擦熱も含まれてはいるものの、ここで圧倒的に大きいのは空力加熱である。空力加熱は大気が濃くなる高度100km以下で始まり、高度80〜40kmあたりが最も厳しいとみられている。

 熱的な厳しさは、加熱率(MW/m2)で表すことができる。はやぶさ2のカプセルの場合、この加熱率は約13MW/m2にも達する。ちょっとピンと来ないだろうが、これは1000Wのストーブ1万3千台を1m四方に並べたときの熱に相当する。初号機の14MW/m2よりは少しだけ小さいものの、スペースシャトルと比べれば約30倍もの大きさだ。

 じつは、加熱率だけを考えるのであれば、形状はもっと平べったい方が望ましい。しかし平べったいと、遷音速の領域で姿勢が不安定になり、パラシュートが開けなくなる恐れがあった。そのため加熱率は大きくなってしまうものの、安定性を維持できる現在のカプセルの曲率になったという。

再突入カプセルの内部構造
再突入カプセルの内部構造。さまざまな要素で構成されている 出典:JAXA

 これほどの高温に曝されても、サンプルの変質を避けるため、カプセルの内部は50℃以下を保つようにとの厳しい要求が課せられている。こんな小さなカプセルで、いったいどうやったら1万℃という高温から中身を守ることができるのか。それを可能としたのが、「アブレータ」と呼ばれる耐熱材料だ。

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