資生堂が考える美しさとイノベーション、ポストコロナの美容と健康の変化とは:モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)
資生堂と「DMM.make AKIBA」共催のオンラインイベント「資生堂×DMM.make AKIBA × スタートアップ 〜ポストコロナ、美とイノベーションどう変わる?〜」が開催された。本稿ではその内容をお伝えする。
2020年6月25日に資生堂とDMM.comが東京都・秋葉原に構える事業課題解決型プラットフォーム「DMM.make AKIBA」共催のオンラインイベント「資生堂×DMM.make AKIBA × スタートアップ 〜ポストコロナ、美とイノベーションどう変わる?〜」が開催された。
イベントでは、資生堂のオープンイノベーションプログラム「fibona(フィボナ)」などを手掛けるR&I戦略部 R&I戦略グループ マネージャーの中西裕子氏が「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が及ぼす美容業界への影響サマリー」を紹介した。また、国内外から注目を集めるスタートアップ企業で、お茶のIoT「teplo」を展開するLOAD&ROAD、スマートシューズ「ORPHE」を展開するno new folk studioが、資生堂の担当者とポストコロナ美容および健康業界についての対談を行った。本稿ではその内容をお伝えする。
COVID-19による新たな生活習慣がもたらす変化
COVID-19による、マスク着用の習慣化やテレワークの普及などの“新しい生活様式”は、化粧品の需要や価値観、消費行動など美容業界にも大きな影響を与えている。中西氏は「COVID-19が及ぼす美容業界への影響サマリー」をテーマに変化について紹介した。
資生堂では通常、人々の美をかなえる化粧品を製造しているが、コロナ禍においては手指消毒液(指定医薬部外品)を医療機関に提供した(※)。さらに厚生労働省から認証を受けた消毒液の処方を他企業に広く開示。また、2020年6月1日からは全国の医療従事者に敬意と感謝の気持ちを伝えるとともに、ストレス緩和を寄与することを願って、スキンケア化粧品の無償提供を行うなど、さまざまな取り組みを進めてきている。中西氏は「COVID-19に対する取り組みは多くの企業で行っていることだが、美容業界は環境対応、サステイナビリティなどソーシャル活動を行いながら経営活動に取り組むことが当たり前になりつつあり、この流れはますます加速する」と考えを述べている。
(※)関連記事:資生堂が新型コロナ対策で消毒液の生産開始、月10万リットルを医療機関へ提供
また、COVID-19は化粧品業界にとって顧客との接点にも大きな変化をもたらそうとしている。「ソーシャルディスタンスを確保することから派生し、EC(電子商取引)の活用がさらに進む」と中西氏は語る。化粧品販売においてITを活用する動きはコロナ禍の前から活発化していたが、今後はこれらの動きも本格化する見込みだ。
例えば、資生堂では自撮りアプリで簡単にメーク体験できるアプリ「カラーシミュレーション」を展開中である。口紅、アイシャドー、チークなどのポイントメークから、400色以上のアイテムを自由に組み合わせて試すことができる。現在、店頭で客にメークを試すタッチアップが自粛されている中で「これまで培ってきたコミュニケーション方法の価値を、テクノロジーにより安全に安心に体験していただけるようにすることが、大きなチャレンジの1つだと考えている」と中西氏は語る。
COVID-19後の販売コミュニケーションの方策として、期待しているのがコミュニケーションツールのLINEだという。資生堂には肌の悩みや商品の使い方を、LINEを通じて気軽にコミュニケーションできるサービスがあり「同サービスへの期待が高まっている」(中西氏)。
この他、公共の場でマスクをつけていることが当たり前になってきたことから、この夏にはマスク焼けや、マスクの繊維による肌トラブルなどが発生することが予想される。また、マスクをしたままでのメークなどについても「新たなニーズがあると見ており、商品開発なども検討する」(中西氏)。さらに、美容と健康を組み合わせたサービス「ビューティーウエルネス」も着目され、この流れは拡大することが見込まれる。「こうした新たな美容の問題や新たなトピックに対していち早く対応していく」(中西氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.