パナソニックは新組織で「現場センシング」を推進、2025年度に売上高1000億円へ:製造業IoT(2/2 ページ)
パナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社が新事業「現場センシングソリューション」の戦略について説明。同事業を推進する新組織「スマートセンシング事業センター」により、現時点の売上高400億円弱を、2025年度に1000億円まで成長させる計画だ。
顔認証技術の展開拡大に向けてパートナー戦略も拡充
この現場センシングソリューションの進化を加速し、よりダイナミックに展開するために、2020年7月1日付で設立されたのが新組織のスマートセンシング事業センターである。PSSJ パブリックシステム事業本部 システム開発本部 統括部長で、スマートセンシング事業センターのセンター長を兼任する新妻孝文氏は「今後の強化ポイントは3つある」と説明する。
1つ目は、セキュリティカメラをはじめとするエッジデバイスのさらなる進化だ。まず、パナソニックのデザイン哲学「Future Craft」を基に、サービス、コンテンツ、プロダクトの3部門から成るデザインセンターのノウハウを生かし、システムの利用者だけでなく運用者にも使いやすさや分かりやすさ、安心感を提供していく。新妻氏は、そういったデザインの代表例として、国内6空港で195台が稼働している「顔認証ゲート」を挙げた。
デザインとともに必要なエッジデバイスの高機能化では、セキュリティカメラ内で画像処理を行うなどのエッジ側へのアプリケーション導入を可能にしていく方針だ。車両ナンバープレート認証やAIプライバシー保護、AI動体検知といった処理を、サーバで行うのではなく、カメラ内で完結できるようにする。「通信コストの削減やサーバの処理負荷軽減、つまりはシステムの導入維持コストの削減が可能になる」(新妻氏)。また、AI機能をパッケージしたデバイスとして提供することで、SIパートナーとの協業スキームの構築も容易になるという。
2つ目のAI画像センシング技術の先鋭化は2つの要素から構成されている。1つは、学習データの自動生成による認証精度向上の取り組みであり、AIの構築に必要な膨大な学習データを得るために、希少なサンプル画像から学習データを生成するデータオーグメンテーション技術を有している。もう1つのマルチモーダルセンシング技術では、顔認証だけでなく音声など他のセンシング技術を組み合わせることで、現場での実用性を向上する。
3つ目の強化ポイントは、顔認証技術をより多くの顧客に提供するためのスキームの構築だ。パナソニックは既に2019年11月から、クラウドベースで同社の顔認証エンジンを利用できる顔認証APIを提供している。この顔認証APIのパートナー企業における活用を推進しながら、顔認証以外のアプリケーションと組み合わせたサービスとしての展開も進めたい考えだ。
顔認証技術の展開拡大に向けては、これまで重視してきた顧客との共創だけでなく、進化したエッジデバイスを軸とするソリューションパートナーや、クラウドサービスを活用するアプリケーションパートナーを広く募ることで、現場センシングソリューション事業の拡大につなげる方針である。
また、COVID-19対応でのニーズが強い現場センシングソリューションの1つとして、検温システムと連動した人物トレースシステムの開発を進めているという。2020年内に実証実験を開始し、2021年に向けて提供を始めたい考えだ。
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