ニュース
臓器を正確にコピーした3Dプリント線量計が、正確で安全な放射線治療に貢献:3Dプリンタニュース
産業技術総合研究所(AIST)と東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻、金沢工業大学 応用化学科の研究グループは、放射線を照射することで発色するラジオクロミック材料を用いた3Dプリント線量計の製作に初めて成功した。
産業技術総合研究所(AIST)と東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻、金沢工業大学 応用化学科の研究グループは2020年6月10日、放射線を照射することで発色するラジオクロミック材料を用いた3Dプリント線量計の製作に初めて成功したことを発表した。
正確で安全な放射線治療の立案に貢献
X線CTスキャンで患者の臓器の形状を正確に3Dデータ化し、それを基にラジオクロミック材料と3Dプリンタで造形することで、オーダーメイドの3次元線量計を実現。がん患者に対して、正確で安全な放射線治療の立案に貢献できるとする。
放射線治療は、がんを治療しながら周辺の正常組織に影響を及ぼさないよう、放射線をどのように照射するか、綿密な計画が必要となる。そのため、放射線の線量を測定する線量計は放射線治療において重要な役割を果たすが、放射線治療には強度変調放射線療法や定位体放射線療法、高エネルギーハドロン療法といったさまざまな照射技術があり、線量分布を複雑にする原因となっていた。
今回の研究は、放射線を照射することで発色するラジオクロミック材料と3Dプリンタを用いて、3次元線量計を作るというアイデアを具現化したもの。放射線を照射するとラジオクロミック材料である透明ポリマーが発色するため、3次元線量分布が容易に可視化され、定量化できる。
(a)オーダーメイド3D線量計のデモに使用した試料の外観/(b)3D CT用に撮影した試料のX線画像のうちの1枚/(c)360枚のX線画像から再構成した3D CT画像 ※出典:AIST/東北大学大学院/金沢工業大学 [クリックで拡大]
関連記事
- 3Dプリンタの可能性を引き上げる材料×構造、メカニカル・メタマテリアルに注目
単なる試作やパーツ製作の範囲を超えたさらなる3Dプリンタ活用のためには、「造形方式」「材料」「構造」の3つの進化が不可欠。これら要素が掛け合わさることで、一体どのようなことが実現可能となるのか。本稿では“材料×構造”の視点から、2020年以降で見えてくるであろう景色を想像してみたい。 - いまさら聞けない 3Dプリンタ入門
「3Dプリンタ」とは何ですか? と人にたずねられたとき、あなたは正しく説明できますか。本稿では、今話題の3Dプリンタについて、誕生の歴史から、種類や方式、取り巻く環境、将来性などを分かりやすく解説します。 - 「単なる試作機器や製造設備で終わらせないためには?」――今、求められる3Dプリンタの真価と進化
作られるモノ(対象)のイメージを変えないまま、従来通り、試作機器や製造設備として使っているだけでは、3Dプリンタの可能性はこれ以上広がらない。特に“カタチ”のプリントだけでなく、ITとも連動する“機能”のプリントへ歩みを進めなければ先はない。3Dプリンタブームが落ち着きを見せ、一般消費者も過度な期待から冷静な目で今後の動向を見守っている。こうした現状の中、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の田中浩也氏は、3Dプリンタ/3Dデータの新たな利活用に向けた、次なる取り組みを着々と始めている。 - JVCケンウッドが痛感した3Dプリンタの量産活用における難しさと解決への筋道
日本HP主催「HP デジタルマニュファクチャリング サミット 〜3Dプリンターによる、ものづくりのデジタル革新〜」において、JVCケンウッドは「JVCケンウッドが推進するデジタルマニュファクチャリングの取り組み」をテーマに講演を行った。 - 3Dプリンタの種類と3Dデータのファイル形式
連載「『ミニ四駆』ボディーを3Dプリンタで作ろう」では、前回シリーズで作成したミニ四駆ボディーの3Dモデルデータを使って、実際に3Dプリントするまでの流れを紹介。第1回は、3Dプリンタの種類と3Dデータのファイル形式について解説する。 - 3Dプリンタがなくなる日
3Dプリンタは、3Dプリンタと呼ばれなくなったときに、本当に身近なものになるのかもしれない。FABカルチャーを発信するスタジオを運営する神田沙織氏が、自身の活動を紹介しながら家庭向け3Dプリンタを取り巻く現状について語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.