「システムズエンジニアリング」と「BOM連携」で進める製造業のデジタル業務改善:製造業にダイナミズムをもたらすデジタル変革(2)(4/4 ページ)
デジタル化がどのように製造業の企業活動の変革を導くのかを解説する本連載。第2回は、デジタル技術の活用による業務(オペレーション)改善について、「システムズエンジニアリング」と「部品表/材料表(BOM)連携」という2つの観点から紹介する。
e-BOMと他領域のBOMのスムーズな連携が鍵に
残念ながら、e-BOMとその他の領域とを連携するプロセスがうまく運用されていないケースが多く見受けられます。例えば、マイクロソフトのExcelなどにBOM情報を書き出し、手作業で他領域のBOMに転記している、などですが、この場合以下のような問題が発生します。
- 転記工数が膨大
- 上流の変更に対してタイムリーに対応不可
- 手作業による転記間違い、転記漏れが発生
特に、e-BOMとm-BOM、BOPとの連携の際に障害が頻発します。
設計側の新規製品に対応すべく製品ラインを拡大するためには、繰り返し生産や類似生産をスムーズにするm-BOMやBOPを生産技術側で定義することが必要です。しかし、そのための工数が十分に確保されない状態が続くと、新規製品に対して適合したマスターを製造側が持っておらず、都度BOPを定義するという非効率な作業が残ってしまいます。
さらに最近の潮流であるデジタルトランスフォーメーションの一環として工場全体のスマート化を図る場合、各作業の製造工程、作業区間の搬送情報が、今までよりも詳細な粒度で識別、登録されている必要があります。いずれにせよ人による手作業では実現に限界があります。
デジタル技術を用いた解としては、以下の2つが考えられます。
- e-BOM、m-BOM、BOP、サービスBOMのような主要なBOMを一元的に管理するデータ基盤(システム開発か商用パッケージ活用の2つの選択肢があります)を構築し、上流の変更が下流工程に与える影響を可視化、BOM連携による手作業を可能な限り軽減します。近年では、BOM連携を強化したPLMパッケージも数多く見られます
- 業務領域ごとのBOM管理システムはそのままに、それぞれを連携するインタフェースとプロセスを構築するアプローチをとります。例えばe-BOMはPLM側、m-BOMをERP側で管理している場合、PLM-ERP連携インタフェースを構築、運用する。こちらもPLMまたはERPベンダー側からプラグインとして提供されているツールが存在します
今回は、革新的な製品やサービスを対象として、業務(オペレーション)をどのようにデジタル技術で改善するか、システムズエンジニアリングと部品表/材料表連携という2つの方法論で紹介しました。新製品を市場へ展開し、大きく収益を上げるためには、製品そのものだけではなく業務においてもデジタル技術を活用することが有用であることがお分かりいただけたと思います。
連載最終回となる次回は、生産領域の革新について取り上げる予定です。それではまた次回お会いしましょう。
筆者プロフィール
志田 穣(しだ みのる) アクセンチュア株式会社 ビジネスコンサルティング本部 インダストリーX.0 エンジニアリング領域リード
設計開発領域を核として、複数の製造業デジタルトランスフォーメーションプロジェクトを統括。アクセンチュア入社前は、原価管理ソリューション、開発における法規文書管理など多岐にわたるPLMプロジェクトを推進。また、産業IoT事業開発企画等のコンサルティング、自動車を中心とした組立系製造業にCAD/PLMツールの導入や、それをてこにした設計開発業務のプロセス改革に従事した経験がある。
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