プレイ動画と操作データでAIが「パックマン」を理解、構成要素も再現:自動運転技術
NVIDIAは2020年5月22日(現地時間)、新しいAI(人工知能)モデル「GameGAN」を開発したと発表した。GameGANはゲームのソースコードなどは参照せず、ゲームをプレイするキー操作のデータと、それに連動したプレイ画面を基にゲームのルールやゲーム内の世界の構造を理解する。
NVIDIAは2020年5月22日(現地時間)、新しいAI(人工知能)モデル「GameGAN」を開発したと発表した。GameGANはゲームのソースコードなどは参照せず、ゲームをプレイするキー操作のデータと、それに連動したプレイ画面を基にゲームのルールやゲーム内の世界の構造を理解する。
GameGANのプロジェクトは8カ月前にスタートし、NVIDIAはGameGANを用いて完全に機能する「パックマン」を生成することに成功した。GameGANが生成したパックマンは、2020年後半にプレイ可能な形で公開する予定だ。
GameGANは敵対的生成ネットワーク(GAN)を活用してコンピュータゲームエンジンを模倣するニューラルネットワークモデルだ。プレイヤーが操作したキーから環境がどのように変化するかを学ぶ。研究に当たって、タイトルは公表しなかったがパックマン以外もプレイしている。複数人のプレイヤーが参加するゲームには今後適用していく段階だ。また、チェスなどで高い勝率を発揮することを目的とした学習は難しいという。
将来的にはゲーム業界以外でも活用できる技術だとしている。例えば、ゲームのプレイ画面とコントローラーの操作データの代わりに車載カメラの映像とドライバーの運転操作のデータを学習させることで、GameGANが現実世界の運転ルールや物理法則を理解できるようになる。GameGANは、自律ロボットなどのためにトレーニング用のシミュレーターを構築する作業を、ニューラルネットワークのトレーニングで終えられるようにするための第1歩となるという。
NVIDIAの研究開発部門であるNVIDIA ResearchがGameGANを開発した。パックマンの生成にあたっては、バンダイナムコエンターテインメントが提供したデータとAIスーパーコンピュータ「DGXシステム」、合計数百万フレームのパックマンのプレイデータを用いてニューラルネットワークのトレーニングを行った。その結果、トレーニングを受けたGameGANは、迷路の形状やドット、「パワークッキー」などの環境の静的な要素、パックマン本体やゴーストなど動き回る要素をそれぞれ生成した。ゲームのBGMは再現していない。
GameGANが生成したパックマンは、パックマンが迷路の壁を通り抜けないことや、動き回りながらドットを食べること、パワークッキーによってモンスターが変色すること、パックマンがゴーストに捕まるとゲームが終わることなどをオリジナルと同様に理解した。
また、GameGANは動くキャラクターと背景を分離して捉えることが可能で、パックマンの舞台を生垣の迷路にしたり、パックマンの代わりに別の絵文字を使用したりすることができる。新しいゲームの開発に貢献するとしている。また、コンピュータゲーム開発者は複数の既存のゲームを対象にGameGANを利用することで、共通する基本的な概念やルールなどを見つけ出すためのプレイ時間を削減でき、新たな要素を追加したりすることが容易になるという。
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