「どの軽がオススメ?」と聞かれたら、迷わずホンダを薦めたい:車・バイク大好きものづくりコンサルタントの試乗レポート(3/3 ページ)
今回取り上げるのは軽自動車の販売トップ3に比べると車高が100mmほど低いホンダ「N-WGN」だ。スーパーハイトワゴンに対してトールワゴンとかハイトワゴンと言われる。筆者はスーパーハイトワゴンほどの車高が必要な場面がそれほどあるとは思えず、ハイトワゴンくらいの車高が妥当かなと感じていた。先代モデルとの比較も含めてレポートしていこう。
レベルが2段階向上した乗り心地
シフトレバーをDレンジにシフトし走り出そう。車体中央側へのオフセットが小さくなったアクセルを踏み込む。ダイハツやスズキの軽自動車の最新モデルにも試乗したことがあるが、エンジンの元気さはやはりホンダが1枚上手だ。43kWの最大出力を7300rpmという高回転域で絞り出す新開発のS07B3気筒エンジンで、パワフルかつスムースに回る。トルクコンバーターを持つCVTも、平坦路を普通に走っている限りでは全く問題なく自然に車速が上がっていく。
驚くべきはその乗り心地だ。サスペンションが本当に良く動き、路面のギャップやうねりを何重にも緩和して、出来の良いシート越しに柔らかくドライバーに伝える。まるで1980年代のフランス車のような快適さだ。エンジンノイズや排気音、風切音も時速70〜80kmならほとんど聞こえてこない。先代N-WGNに比べると2段階、いやそれ以上レベルが上がっている。先代は前席に乗っている分には我慢ができる範囲だが、路面のギャップによる突き上げがひどく、とにかく後席の乗り心地が悪かった。この乗り心地の良さは新型「N-BOX」の発売直後に試乗して感じていて、同一プラットフォームのN-WGNにも当然受け継がれるだろうとは予想していたが、改めて驚いた。
なぜここまで乗り心地が良くなったのだろうか? 決してサスペンションに高級なものを採用したわけではなく、高いボディー剛性と軽量化のなせる業だろう。今回のモデルチェンジでは、Bピラーを中心としたドア廻りのボディー溶接の多くの部分を、従来のスポット溶接からレーザーによるシーム接合に変更。フロア周りには高粘度接着剤による接合を採用した。点接合から線接合への変化でボディ剛性を飛躍的に高めるとともに、高張力鋼板の使用割合を3倍に増やした。これにより、ホワイトボディで150kg、安全・快適装備などの増加分を差し引いても車体重量を80kg低減した。この2点でサスペンションが本来の性能を発揮し、まるでフランス車のようなしなやかな足を得ることができたのだろう。
そしてその裏には、本田技術研究所の四輪車の開発機能がホンダの四輪事業本部にエンジニアとともに移管されたことを忘れてはならないだろう。優秀なエンジニアがよりお客様に近い視点でクルマの開発を進めたことはホンダの戦略として間違いがないと思っている。
試乗コースにはちょっとしたワインディングがあった。少しペースを上げてコーナーを抜けると、ロールは大きいものの不安なく向きを変えていく。ホンダの電動パワーステアリングの制御は、Nシリーズを発売した2011年頃からずいぶん良くなった。ブレーキの利き具合にも不満はない。ただし、同じコースを新型N-BOXで走った時にはロールの大きさと視線と重心の高さで少し怖さを感じ、速度を落とさざるを得なかった。山間部を走ることが多いのであればスーパーハイトワゴンは選択しない方が良いだろう。
今1番おすすめの1台
今回の試乗で最も印象に残ったのはその乗り心地の良さだ。今までの軽自動車とは明らかにレベルが違う。そして先進の安全装置がてんこ盛り。軽自動車の価格が高くなったと言われるが、1番廉価なGグレードなら税抜き118万円で買える。新型N-WGNは筆者が自信をもってお勧めできる1台だ。
お薦めは、Lグレード(エンジンはNA、当然ホンダセンシング付き)だ。Gグレードの税抜き価格にプラス6万円で、ETC車載器、シートヒーター、4スピーカー、UV・IRカットガラス、USBジャック2個が装備される。またGグレードでは設定のないメーカーオプションのLEDヘッドランプもある。
筆者は今後、友人知人から相談されたときには「Nシリーズ」を薦めるだろう。フルモデルチェンジが噂されているN-ONEには当然このプラットフォームが使用され、6速マニュアルミッションが搭載されるという。しなやかな足はそのままに、ロールを押さえ、元気なエンジンをマニュアルミッションで走らせることができれば、きっと楽しいクルマになることだろう。今から楽しみにしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 最近の軽自動車は高過ぎる? 値上がりの理由お答えします
最近の軽自動車って価格が……と思ったことはありませんか。「昔はこのくらいの値段で売っていたのに」「モデルによっては普通車よりも高額になるなんて」と常々感じる方もいらっしゃるでしょう。本当に軽自動車は高過ぎるのか、具体的な数字を基に検証します。 - 新世代SKYACTIVの幕開け飾る「MAZDA3」、魅力的な2つのモデルに乗った
マツダのクルマづくりはデザインとSKYACTIVを冠したエンジン、トランスミッション、シャシーで飛躍的にそのクオリティを高めてきた。そしてSKYACTIV第2章ともいえるフェイズの幕開けを飾るのが2019年5月24日に発売されたアクセラの後継車「MAZDA3」だ。自宅付近のディーラーで早速試乗したので筆者が感じたことを記そう。 - FRという個性を捨てて、BMW「1シリーズ」は生き残れるのか
ついにこの時が来てしまった。BMW「1シリーズ」のFF(前輪駆動)化だ。は後輪駆動にこだわりを持っていて、2003年式のSUBARU「レガシィB4」を最後に、メインのクルマは常にFRだ。新型1シリーズ(以下型式名のF40)への第一印象はネガティブだ。でも乗ってみなければ語れない。 - トヨタの20年度販売は2割減へ、不透明な状況下で示した見通し
2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)の業績見通しを示せない企業が少なくない中、トヨタ自動車は2020年5月12日、2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)の業績見通しを発表した。売上高(営業収益)は前期比19.8%減の24兆円、営業利益は同79.5%減の5000億円を見込む。当期純利益などについては未定とした。 - ホンダのモノづくりをオーディオにも、開発者にこだわりを聞く
ホンダがオーディオ機器用蓄電機を開発した。なぜ、ホンダが畑違いのオーディオ市場に足を踏み入れたのか。また、オーディオ製品の開発にあたり、ホンダの強みが生きた点や苦労した点はどこにあったのか。開発を担当した本田技術研究所の進正則氏などに聞いた。 - ユーザー体験を高めるデザインの力、ホンダが活用する3D CGやVRとは
日本ものづくりワールド2020(2020年2月26日〜28日、幕張メッセ)の特別講演に本田技術研究所 執行役員 オートモービルセンターデザイン推進担当 デジタルソリューションセンターUX担当の松橋剛氏が登壇。「価値創造におけるホンダのデザイン戦略と、デザイン開発での3D・VR技術活用の取組み」をテーマに、3D CGやVR(仮想現実)技術をフルに活用した研究と開発について、事例を交えて紹介した。