トヨタNTTの“がっかり”提携会見、その背後にある真の狙いとは:モビリティサービス(4/4 ページ)
2020年3月24日、トヨタ自動車とNTTが資本業務提携についての記者会見を開いた。主要な題目はスマートシティービジネスとなっていたが、両社の説明は具体性に欠け“がっかり”させる内容だった。今回の会見の背景にある狙いについて、自動車産業ジャーナリストの桃田健史氏が読み解く。
KDDIとソフトバンクとの関係は?
もう1つ、トヨタについて気になるのが、他の通信事業者との関係だ。
会見の中で、豊田氏は「トヨタはKDDIの株主でもあり……」という発言があったが、それ以上踏み込んだコメントはなかった。記者からも会見時間中に、NTTとの資本業務提携が、KDDIとソフトバンクとの関係に及ぼす影響について質問はなかった。
ただし、豊田氏から「協調と競争」という言葉は出た。自動運転をはじめとするCASEでは、必ず登場する競合他社との連携方法を表現する言い回しだ。
NTTの立場としても今後、「協調と競争」が重要になる。例えば、政府が2024年までに設置を目指す、全国21万基の信号機に5G通信機を設置する目標について、通信インフラ企業関係者らは「業界各社がコンソーシアム化して(投入資金を共同で負担し)対応するのが筋」と語る。
また、トヨタがソフトバンクなどと共同出資する、MONET Technologiesについては、トヨタ独自の技術優先型のプラットフォームというより、MONETコンソーシアムという他業種連携によるサービス+技術連携のプラットフォームという印象が色濃い。そのため、現時点では、トヨタ・NTTによるMaaSプラットフォームビジネスとの直接対決という図式になっていないように感じる。
今後、トヨタとNTTがいうスマートシティープラットフォームが具体化する中で、NTT、KDDI、ソフトバンクの立ち位置が明確化されることだろう。
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