2D図面では見えないものが見える、3Dデータを用いた検証機能のメリット:“脱2次元”できない現場で効果的に3D CADを活用する方法(10)(2/2 ページ)
“脱2次元”できない現場を対象に、どのようなシーンで3D CADが活用できるのか、3次元設計環境をうまく活用することでどのような現場革新が図れるのか、そのメリットや効果を解説し、3次元の設計環境とうまく付き合っていくためのヒントを提示します。今回は、3Dデータを用いた検証機能にフォーカスし、3D CAD活用のメリットを解説する。
生産、製造面での検証機能について
製品を製造する上で組み立て工程を検討し、作業性の確認を行うことは重要です。製品が組み立てられた状態では干渉が起きていなくても、部品を取り付ける際に干渉して入らないことやドライバーなどの工具が干渉してネジが締められない不具合が起こる場合があります。それらを事前に3D CADで検証することが可能です。また3D CADではなく、組み立て検証できる専用ツールもあります。代表的なものとしては、ラティス・テクノロジーの「XVL」や富士通の「VPS」などがあります。これらは、3D CADの容量の重たいデータを軽量化して検証作業を進めることができます。
組み立て工程をアニメーション化したり、(その逆で)分解工程をアニメーション化したりなど、作業者向けのサービスマニュアルの作成も可能です。サービスマニュアルや作業指示書、組み立て指示書の作成については、3D CADと連携させてテンプレートを作り、作成を自動化できるソフトもあります。また、紙よりも3Dを活用した動画の方が相手に伝わりやすいという利点もあります。活用することで作業工数の大幅な削減につながることがあります。
さらに、実際に作業者をコンピュータ上に配置して、手が届くかどうかの確認や視線の確認など、作業性を検証できるものもあります。最近では、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)技術と連携した組み立て性、作業性の検証も行われています。
これまでは、実際にモノがないと組み立ての検証ができませんでしたが、3Dデータがあればモノができる前に、あらかじめ組み立てや分解の検証が可能なため、モノができてから「実は、組み立てられなかった……」といったミスがなくなり、手戻りの時間とコストを大幅に削減できます。
さらに進んだ検証として、メカトロの検証があります。少し前までは、生産設備におけるPLC制御の検証などは実機を作って確認するしかありませんでした。しかし、現在は実機の完成前に仮想環境上でメカおよびソフトウェアの動作検証が行えます。開発の早い段階からソフトウェアの検証やデバッグに着手できるため、品質向上と開発のリードタイム短縮につながっています。最近では、3D CADでロボットのティーチングなどが行えるシミュレータも登場しているようです。
他にも、3D CADの直接的な検証機能ではありませんが、実際に出来上がった製品を3Dスキャナで計測して3Dデータ化したものと、3D CADで設計した3Dデータを重ね合わせて、カラーマップなどで形状の検査/検証が行えるものもあります。例えば、設計データよりもプラスになっている部分を赤色に、マイナスになっている部分を青色に表示させて、可視化することも可能です。また、設計データ同士の比較もできるので、どの箇所で設計変更が行われたのかを確認するのにも役立ちます。
このように、3D CAD/3Dデータを使うことで、さまざまな検証が可能になります。今回紹介した検証機能の他にも、まだまだ検証機能はたくさんあります。もし、自社で行っている2D図面での検証やアナログでの検証があれば、それらは3D CADおよび周辺ツールでの検証に置き換えが可能かもしれません。また、最近ではVRやAR、MR(複合現実)などの技術を活用した“仮想と現実を融合させた検証”が製造業でも行われてきています。3D CAD環境で検証する以上に、3Dデータを“よりリアルな環境”で検証できます(関連リンク:MONOist VRニュース)。
ぜひ、3D CADを活用して、モノを作ってからの不具合発覚と、それに伴う手戻り作業を減らし、品質向上、納期短縮、コスト低減に取り組んでください! 3D CADを使用することで、2D図面ではできなかったことができるようになり、より良いモノづくりの実現へとつながっていくはずです。 (次回に続く)
筆者プロフィール
小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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