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変種変量生産で効率50%向上、“世界的先進工場”は何を行っているのかスマートファクトリー最前線(5/6 ページ)

2020年1月にWEFによる「第4次産業革命を主導する世界的先進工場(ライトハウス)」に選ばれた日立製作所の大みか事業所。世界の中でも先進的な取り組みを進めるスマートファクトリーとして評価された工場となったわけだが、具体的にはどういう取り組みを行っているのだろうか。同工場の取り組みを紹介する。

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実装ラインでは自動化率をさらに向上

 一方、人手が中心の組み立て製造ラインと異なり、以前から自動化が進んでいたプリント基板の実装ラインは、JUKIとの協創やロボットの活用でさらなる自動化率の向上に取り組んでいる。

 日立とJUKIは2018年10月にプリント基板製造ラインの最適化に向けて協創を発表しており、設備データを活用してプリント基板実装の変種変量生産を最適化する「プリント基板生産最適化ソリューション」の共同開発や実証に取り組んでいる(※)。具体的には「生産進捗、実績管理」「稼働実績分析」「不具合解析」「設備保全」「在庫管理」などのアプリケーションを展開する。

(※)関連記事:プリント基板の変種変量生産を最適化、生産性30%向上

 プリント基板の実装工程は、一部の大型部品を除いては、基本的には複数の実装機を組み合わせた製造ラインにより、自動化されている場合がほとんどだ。しかし、部品の挿入や搬送、入出庫など段取り替えに伴う作業は人手で行っているケースも多い。

 大みか事業所で製造する制御システム機器で用いるプリント基板は多岐にわたる。「月産で約3万枚のプリント基板実装を行っているが、1ロットは多くて10枚ほどだ。つまり、月間3000回以上の段取り替えを行っていることになる」(説明員)。段取り替えが増えれば人手作業は増え、作業効率は低下する。こうした変種変量生産の効率化を進めるために、設備データをベースとした改善に取り組む。

 大みか事業所のプリント基板実装ラインは基本的にJUKIの実装機を採用しており、それぞれの機器の稼働状況やワークの状況、品質などの情報を一元的に把握できるようになっている。「それぞれの装置の作業状況を一元的に把握できる他、作業内容を全て画像で撮影し蓄積できる点もJUKIの実装機の魅力だ。実装する部品を『ピックアップする前』『吸着した後』『実装した時』『基板』の外観などを全て記録として残せるため、どこで不具合が起きたかがすぐに立ち返って確認できる」(説明員)。

 これらの情報を生かし、設備状態の監視や生産の進捗の把握、設備の先読みメンテナンス、在庫自動補給などを実現できるようになったという。

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日立製作所 大みか事業所の実装製造ライン(クリックで拡大)出典:日立製作所

 データの一元化と合わせて、作業の自動化領域の拡大にも取り組む。プリント基板に実装する部品リールの自動倉庫を導入した他、同倉庫から実装ラインまでをAGV(無人搬送車)による自動搬送で行っている。また入庫した部品を自動倉庫に搬入する工程も産業用ロボットとAGVの組み合わせにより、自動化を実現している。ただ、AGVから自動で実装機にリール部品を挿入する作業はまだ自動化できておらず、挿入は段取り替えと合わせて人手で行っているという。

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部品の入庫口から自動倉庫の間、自動倉庫から実装ラインの間をAGVで自動搬送する(クリックで拡大)出典:日立製作所

実装ラインの生産性を30%改善

 また、大型部品の実装についても人手で行う。作るモノによっての作業の変動が大きいため、これらの作業時間の把握には、組み立て製造ラインに導入した監視システムではなく、日立産業制御ソリューションズが展開する状況収集・可視化システム「VSIP(multi-View added Service for IoT Platform)」を活用している。

 VSIPは、カメラ映像の情報から現場の状況を可視化するシステムだ。複数のカメラが撮影した360度の映像を合成し、現場全体を見下ろしたような1枚の俯瞰映像を表示する。この俯瞰映像に、カメラの映像から画像センシングした人やモノの動態などの情報を重ねて表示し、現場状況を把握する。これにより、大型部品実装用のセルの活用状況を管理し、最適運用を進めている。

 大みか事業所の実装工程では、これらの取り組みにより、生産性を30%改善したという。今後は「現在は検査工程については、一元的にデータを活用できるような仕組みになっていないが、今後は実装から検査まで一連のシステム上で動くようにしていきたい。これらが実現できれば、実装機の工程だけでなく、実装工程全体のリードタイムをさらに短縮することができる」(説明員)としている。

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