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三菱電機がMEMS式LiDARを開発、10cm角サイズで水平視野角は120度センシング

三菱電機は、水平・垂直の2軸で走査する電磁駆動式MEMS(微小電子機械システム)ミラーを搭載し、小型で広い水平視野角を持つ「MEMS式車載LiDAR(ライダー)」を開発した。今後は、さらなる小型化や垂直視野角の拡大を進め、2025年度以降の実用化を目指す。

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開発したMEMS式車載LiDAR
開発したMEMS式車載LiDAR(クリックで拡大) 出典:三菱電機

 三菱電機は2020年3月12日、水平・垂直の2軸で走査する電磁駆動式MEMS(微小電子機械システム)ミラーを搭載し、小型で広い水平視野角を持つ「MEMS式車載LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)」を開発したと発表した。今後は、さらなる小型化や垂直視野角の拡大を進め、2025年度以降の実用化を目指す。

 新開発のMEMS式車載LiDARの特徴は大まかに分けて2つある。1つは、送信光と受信光のそれぞれを水平・垂直の2軸で走査する電磁駆動式MEMSミラーの開発である。車載LiDARで先行車両や歩行者などの高精細な3次元画像を取得するには、送信光であるレーザーを対象物に照射し、その反射による受信光をより多く集めることが必要になる。そこで求められるのが、光路に設置されるミラーの大型化やミラーの振れ角の拡張だ。

 新開発のMEMSミラーは、独自構造により面ひずみを抑制する一方で、業界最大級となる7×5mmサイズと軽量化を両立し、より高い駆動力が得られる電磁方式MEMSの採用で水平で±15度、垂直で±3.4度という広い振れ角を実現した。また、MEMSミラーは半導体加工技術でシリコン基板上に多数個作成されているため量産性に優れている。モーターで駆動させる機械式に比べ、使用する部品点数が少なくより高い耐久性が期待される点もメリットだ。

 もう1つの特徴は、新開発のMEMSミラーの採用と、光学部品(複数のレーザー光源、光検出器、レンズなど)の最適配置により光のケラレ(LiDAR内部の部品配置の影響を受け、レーザー光が遮光されること)を抑制し、120度という広い水平視野角を確保した光送受信機構である。これにより、高精細な3次元画像を広範囲に取得できるため、搭載車両の前方を走行する先行車両や対向車両、路上横断中の歩行者、信号機、標識などの路側物を適切に検知可能になるという。

開発したLiDARにより取得した3次元画像
開発したLiDARにより取得した3次元画像(クリックで拡大) 出典:三菱電機

 また、信号処理回路基板や電源回路、光送受信機構の最適配置により、LiDAR本体の小型化も実現した。外形寸法は108×105×96mmとほぼ10cm角サイズで、容積は900ccになる。

 今後の開発目標としては、垂直視野角の拡大とさらなる小型化を挙げている。MEMSミラーでは、梁構造の改良により垂直:±6.0度以上という広い振れ角を目指す。併せて、LiDAR自身の性能としても25度以上の垂直視野角を実現し、近距離の車両や歩行者の検知をより容易にすることを目指す。小型化では、容積で350cc以下を目標としている。

車載LiDARの世界市場は2025年に3300億円へ

 車載LiDARは、車両や歩行者などの周囲にある対象物にレーザーを照射し、反射してくるまでの時間を計測することで正確な距離を測定し、周辺の状況をリアルタイムかつ立体的に把握できるセンサーだ。ADAS(先進運転支援システム)の高度化や自動運転技術の実現に不可欠なキーデバイスであり、年平均成長率170%で世界市場が急拡大している。2025年度の市場規模は約3300億円という予測もある。

 現時点で自動運転車などの実証実験に用いられているLiDARは、モーターで回転するミラーにレーザーを照射し、周囲の状況を計測する「機械式」が主流だ。ただし、モーター駆動部の部品数が多くなることから小型化が難しく高コストであり、モーターを常に駆動させるため温湿度や振動などに対する耐久性も課題になっていた。三菱電機が開発したMEMS式LiDARをはじめとする非機械式LiDARは、自動運転車を実証実験レベルから量産段階に進めるのに実用化が必須といわれている。

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