2020年は空前の火星探査イヤーに、はやぶさ2が帰還しH3ロケットの開発も着々:MONOist 2020年展望(3/4 ページ)
2020年の宇宙開発で最も注目を集めそうなのが「火星探査」だ。この他「月・小惑星探査」「新型ロケット」「多様化する人工衛星」をテーマに、注目すべき話題をピックアップして紹介する。
H3ロケットの開発が大詰め、各国の次世代機も
ロケット関連の話題では、まず日本の新型基幹ロケット「H3」に注目したい。初号機の打ち上げは「2020年度」とされており、おそらく2021年に入ってからになる可能性が高いが、開発はいよいよ大詰め。2020年は各種試験を行いつつ実機の製造を進めるので、ロケットの姿が徐々に見えてきそうだ。
開発のキーとなるのは、第1段で採用する新型エンジン「LE-9」だ。従来のエンジン「LE-7A」は高性能な反面複雑な「2段燃焼」方式だったが、LE-9はシンプルで本質安全な「エキスパンダーブリード」というサイクルに変更される。第2段で使用していた実績はあるものの、大推力が必要な第1段への適用は大きなチャレンジだった。
LE-9は2019年から、「厚肉タンクステージ燃焼試験(BFT:Battleship Firing Test)」と呼ばれる大規模な燃焼試験を行っており、2020年2月に無事完了。ターボポンプの共振など、これまで問題の発生もあったものの、エンジンの推力や比推力はほぼ想定通りの数字が出ているとのことで、完成に向け道は見えてきた形だ。
今後、固体ロケットブースタ「SRB-3」の燃焼試験や分離試験など、残りの試験を終わらせてから、種子島にて、最終試験といえる「実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)」と「総合システム試験(IST)」を行うことになる。年内にどこまで進むかは分からないが、進捗に注目していきたい。
2020年は、欧州の「アリアン6」や米国の「SLS」など、いくつかの海外ロケットが初飛行を予定している。ロケットの開発計画は基本的に遅れるものなので、打ち上がってみるまでなんとも言えないが(実際、SLSは既に大幅に遅延している)、海外ロケットの開発状況にも注目したいところだ。
また気になるのは、SpaceXの超巨大ロケット「Starship」の動向だ。Starshipは、全長50m、直径9mという、前代未聞のサイズの再使用型宇宙船。打ち上げ時には、第1段としてこれまた巨大な「Super Heavy」ロケットを使う計画で、100トン以上の輸送能力があるという。月や火星への飛行も視野に入れ、開発が進められている。
同社は、地球周回軌道への初打ち上げを年内にも実施するとしている。実機大のプロトタイプが2019年にできたばかりなのに、2020年中に周回飛行というのはさすがに無理だろうと思うのだが、まあSpaceXの言うことなので、取りあえず2〜3年くらい遅れるつもりで見ていればよいのではないだろうか。
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