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「RaaS」が“手でモノを運ぶ作業”から人を解放するサプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(7)(4/4 ページ)

物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する本連載。第7回は、従来の物流現場で人が担ってきた「作業」を物流ロボットなどで自動化するRaaS(Robot as a Service)を取り上げる。

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物流ロボットからRaaSへの進化

 物流ロボットは、「人が手でモノを運んでいる作業」の全てを代替可能です。AMRのように、「人とともに働くロボット」であれば、物流センターのみならず、工場、店舗、ホテル、オフィスビルなどでの使用も多分に想定されます。物流センターから家まで荷物を届けてくれるようになるかもしれません。アタッチメントを付け替えることで、「昼間は料理のデリバリー、夜はホテルでルームサービス」「平日は工場で出荷作業、休日は店舗で巡回作業」「真夏は清涼飲料、クリスマス前は玩具の物流センター」というように、繁閑に応じて使用場所を変えることも考えられます。

 このような世界が現実のものとなるためには、ロボット自体の機能性や汎用性の向上もさることながら、必要なときに、必要な期間だけ、必要なロボットを使用できる、RaaSの普及が不可欠です。ロボットの使用時間ではなく、製品出荷額や人件費削減効果といったパフォーマンスに応じて費用を支払えるようになれば、その利便性はなおいっそう高まるはずです。

RaaS時代のロボットシェアリングビジネス
RaaS時代のロボットシェアリングビジネス(クリックで拡大)

 ロボットを売るのではなく、サービスとして提供するのであれば、ロボットが使用されている現場の情報を半ば必然的に収集できるようになります。納品先の在庫量や出荷動向をもとに、より適切な生産計画を提案することも可能になるでしょう。あるいは、店舗での販売状況や消費者の購買動向を把握することで、商品企画やプロモーションの的確性を高められるようになるかもしれません。

 ロボットは「人の作業を代替する存在」であると同時に、「サプライウェブの全体最適に必要な情報を収集するツール」にもなるわけです。RaaSを「ロボットの開発・製造で収益を得るためのサービスモデル」と考えるのではなく、「サプライウェブの全体最適を支えるデータプラットフォーム」とすることができれば、より大きなビジネスへの飛躍を成し遂げられるはずです。



 さて、次回は、ソフトウェアベンダーにとってのビジネスチャンスを紹介したいと思います。TaaSやRaaSの普及を通じてデジタル化された情報をどのように活用できるのか、新たなプラットフォームビジネスの方向性を解説します。

筆者プロフィール

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小野塚 征志(おのづか まさし) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革等を始めとする多様なコンサルティングサービスを展開。2019年3月、日本経済新聞出版社より『ロジスティクス4.0−物流の創造的革新』を上梓。

株式会社ローランド・ベルガー
https://www.rolandberger.com/ja/Locations/Japan.html

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