Armが提唱する「エンドポイントAI」の処理性能は従来比で最大480倍に:人工知能ニュース(2/2 ページ)
Armがマイコン向けプロセッサコアIP「Cortex-Mシリーズ」の最新プロダクト「Cortex-M55」と、Cortex-Mシリーズとの組み合わせにより機械学習ベースの推論アルゴリズムを効率的に実行できるNPU「Ethos-U55」を発表。Cortex-M55とEthos-U55を組み合わせた場合、現行の「Cortex-M33」と比べて推論アルゴリズムの処理性能は最大480になる。
「エッジAI」より末端側の「エンドポイントAI」の市場が拡大する
Armは、Cortex-M55とEthos-U55の発表に合わせて、IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、より末端側のエッジでAI処理を行えるようなハードウェアとソフトウェア開発環境が必要になるとしている。
日本法人のアームで応用技術部 ディレクターを務める中島理志氏は「AIによって物事がさまざまに変わる可能性は高い。しかし、エッジでAIを処理するハードウェアとしては、Cortex-Aシリーズなどを搭載する『エッジAIサーバ』が必要なのが現状だろう。われわれは、クラウドAIではないエッジAIのうち、より末端側のデバイスでもAI処理が可能な『エンドポイントAI』の市場が今後拡大していくと考えている。Cortex-M55とEthos-U55はそのための製品だ」と語る。実際に、Armが想定するエンドポイントAIの市場は、スマートメーターやスマートホーム、自動駐車システム、公共インフラなど幅広い。
また、ソフトウェア開発環境についても新たな取り組みを進めていく方針だ。従来のAI機能を搭載する組み込み機器の開発では、制御用組み込みコード、DSPに対応するDSPコード、NPUで処理する推論アルゴリズムのモデルを個別に開発した上で「ベテランプラグラマーが職人技で組み合わせて実装していた」(中島氏)。今後は、開発期間を短縮できるように、ソフトウェア開発環境上で上記の3種類のコードを統合できるようにする。このソフトウェア開発環境は、さまざまな機械学習フレームワークに対応させていく考えだが、まずは「TensorFlow Lite for Microcontrollers」からになる。
Armは、Cortex-M55とEthos-U55の投入によって機械学習処理を適用できる範囲を拡大できるようになる。従来は、Cortex-Mシリーズ単体による単純なセンサー処理と、Cortex-AシリーズやGPU「Maliシリーズ」、NPUの「Ethos-Nシリーズ」を用いたリアルタイム画像処理という両極端の対応にとどまっていた。中島氏は「Cortex-M55単体と、Cortex-M55とEthos-U55の組み合わせにより、これらの間の領域をカバーできる。特に、音声処理や画像処理の用途で力を発揮するのではないか」と述べている。
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