日本交通とDeNAが配車アプリ事業を統合、MaaS領域の展開を加速:モビリティサービス
日本交通ホールディングスとディー・エヌ・エーは、タクシー配車アプリの事業統合に合意した。約10万台の車両を配車可能な「国内最大のモビリティサービス」が誕生する。
日本交通ホールディングスとディー・エヌ・エー(DeNA)は、2020年2月4日、都内で記者会見を開き、タクシー配車アプリに関連する事業を統合すると発表した。統合の対象となるのは、日本交通ホールディングスが展開するタクシー配車アプリ「JapanTaxi」事業と、DeNAの次世代配車アプリ「MOV」事業である。統合により、約10万台の車両を配車できる「国内最大のモビリティサービス」が誕生するという。統合日は2020年4月1日。
日本交通ホールディングスの強みである幅広いサービス展開エリアとタクシーの提携台数、タクシー会社向けハードウェアの開発力に、DeNAが保有するのAI(人工知能)やインターネット関連の技術/サービス開発力を掛け合わせることで、MaaS領域における両社の取り組みを強化し、事業展開を加速させる狙いがある。
統合については、DeNAのMOV事業を日本交通ホールディングスのJapanTaxi事業に承継する形で行われる。統合後の新会社では、代表取締役会長に日本交通ホールディングス 代表取締役 川鍋一朗氏が、代表取締役社長にはDeNA 常務執行役員 オートモーティブ事業本部長 中島宏氏がそれぞれ就任する。新会社の社名は未定で、今後検討する。なお、一部報道で「JapanTaxiがMOVを吸収合併する」と報じられたことについて、川鍋氏は「あくまで対等な立場での統合であり、吸収ではない。役員数も両社から2人ずつ選出し、同数にそろえる」として否定した。
統合の背景について、中島氏は「国内のモビリティのオンデマンドサービスが予想よりも普及しておらず、この状況に川鍋氏とともに危機感を覚えたからだ」と語る。DeNAの調査によると、国内の月間タクシー輸送回数は概算で約1億回と推測されるが、このうちタクシー配車アプリ経由での輸送回数は、約2%程度にとどまるという。「背景には、乗務員の高齢化が進み、車両の供給台数が減少しているというタクシー業界の抱える根本的な課題がある。このため、雨天時や深夜など『今、タクシーに乗りたい』というニーズに合わせて、適切に配車を行うことが難しい状況だ」(中島氏)。こうした課題に対して、両社は事業統合によって配車可能台数を増強すると同時に、AIやIoT(モノのインターネット)といった技術を用いたサービス開発を進めて、解決に取り組んでいくとした。
さらに、統合後の目指す姿について、中島氏は「ライドシェア導入の議論をたびたび耳にするが、海外のスキームをそのまま輸入しても、うまくいくとは限らない。日本のタクシーは、交通事故や強盗などの発生率が世界的に見ても低く、また高いホスピタリティを利用者に提供できるなどの強みがある。こうした特徴を生かしつつ、タクシー配車アプリの後進国ともいえる日本の市場で、『日本ならではの最先端のモビリティサービス』を生み出していきたい」と意気込みを語った。
関連記事
- MaaSの次世代戦略で各社が重視する、4つの分野とは
矢野経済研究所は2019年12月12日、MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)関連企業の次世代戦略を調査した結果を発表した。 - 次世代モビリティの姿、自動運転、MaaS、エアモビリティ、地域連携がキーワードに
「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、幕張メッセ)、「第46回東京モーターショー2019」(会期:2019年10月24日〜11月4日、東京ビッグサイト他)の関連イベントとして2019年10月18日、リレーカンファレンス「Mobility Summit〜近未来の移動空間の姿を浮き彫りに!〜」が開催された。Society 5.0具現化に向けたスマートモビリティによる、近未来の姿を自動運転、MaaS、エアモビリティ、地域連携をキーワードに展望し、新たなイノベーションの社会実装の可能性を議論した。 - デンソーがCxO制度を導入、MaaS向け自動運転システムの事業化も加速
デンソーが2020年1月1日付で実施する組織変更について発表。自動運転・コネクティッド領域の体制強化と機能部門の再編強化、CxO(Chief x Officer)制度の導入が主な内容となっている。 - 通院や往診が難しい地域に「医療MaaS」でオンライン診療、フィリップスとMONET
フィリップス・ジャパンは2019年11月26日、長野県伊那市において、同年12月から医療MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)の実証事業を行うと発表した。看護師と各種医療機器を乗せた「ヘルスケアモビリティ」が患者宅を訪問し、医師が遠隔からオンラインで診療できるようにする。実証事業の期間は2021年3月末までで、フィリップス・ジャパンは伊那市やMONET Technologiesと協力して取り組む。 - 電通も狙うMaaS市場、地域の移動手段としてデジタル化できるかがカギ
電通とMONET Technologies(モネ)、東京海洋大学は2019年9月4〜5日、東京都内で水陸連携マルチモーダルMaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)の実証実験を行った。電通は、地域の利便性向上など魅力向上を図る一環で、移動手段の1つとして船を活用することを狙う。都心で実績や経験を蓄積し、地方や離島などに船を含むMaaSのノウハウを低コストに展開したい考えだ。 - MaaSに熱視線を注ぐマイクロソフト、2020年には日本クラウド市場で首位を狙う
日本マイクロソフトはMaaS(Mobility-as-a-Service)に熱い視線を注いでいる。Microsoft Azureは自動運転やコネクテッドサービス領域でシェアを固めつつあるが、MaaSにおいても自動車メーカーやモビリティサービス事業者などとの関係の深化を狙う。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.