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自動運転で広がる非競争領域、足並みを速やかにそろえられるかMONOist 2020年展望(2/4 ページ)

自動車業界の大手企業が自前主義を捨てることを宣言するのは、もう珍しくなくなった。ただ、協調すること自体は目的ではなく手段にすぎない。目的は、安全で信頼性の高い自動運転車を速やかに製品化し、普及させることだ。協調路線で動き始めた自動車業界を俯瞰する。

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 AVCCの発足から3カ月がたつ2020年1月時点では、参加していない自動車関連企業がまだ多い。メンバーを見ると、ボッシュ、コンチネンタル、デンソーといった日独の大手サプライヤーが参加しているものの、自動車メーカーはトヨタ自動車とGM(General Motors)だけで欧州勢や他の日系自動車メーカーがいない。また、車載半導体関連ではインテルの名前もないし、UberやLyftといった“ロボタクシー”の事業化を目指す企業もまだ参加していない。

 Armの新井氏は「AVCCと同じ目的の団体がないことを加盟企業に確認した。重複があると参加する意味が薄れる。自動運転のコンピューティングプラットフォームを扱う団体は他にないと判断して立ち上げた」と語る。非競争領域に該当する分野について、単独で苦労する企業は少なくないはずだ。参加メンバーが今後どのように増えていくか、注目だ。


AVCCのメンバー(クリックして拡大) 出典:AVCC

AI人材への投資やDevOps、ソフトウェア企業としての競争に

 AVCCにはArmやルネサス エレクトロニクス、NXP、NVIDIAが参加するが、どのプロセッサを使うかという売り込みの場ではない。その性能にどのように実際に到達させるかは、半導体メーカーやティア1サプライヤー、自動車メーカーが各自、検討することになる。

 非競争領域と、自動車メーカーそれぞれの要求。これらを実際の車載コンピュータの形に落とし込むのは、ティア1サプライヤーの活躍の場だ。大手サプライヤー各社が歴史的にハードウェアを得意とするのは言うまでもないが、最近では各社ともソフトウェア開発を強化するための体制を打ち出している。

 デンソーは、トヨタグループの共同出資会社を通じて、自動運転システムの先行開発から量産開発まで広く携わる。TRI-ADやジェイクワッド ダイナミクス(J-QuAD DYNAMICS)での事業活動の他、2020年4月にはトヨタ自動車と、将来のモビリティに最適なSoCの仕様検討も含めた次世代の車載半導体の研究と先行開発を行うMIRISE Technologiesを立ち上げる。さらに、デンソー単独としては、2025年までにグローバルでソフトウェアの開発人員を1万2000人に増やす他、インドやベトナムなど各国の拠点を活用した24時間体制の大規模ソフトウェア開発を実現するという計画もある。

 自動車だけでなく、宇宙や農業、製造業などにも向けてAI(人工知能)開発を行うボッシュは、ソフトウェア開発に毎年37億ユーロ(4463億円)を投資している。現在、3万人以上のソフトウェアエンジニアを抱え、1000人の従業員がAI関連に従事する。今後は社内の教育体制を拡充し、社内のAI人材を2年間で2万人に増やす。マネジャーやエンジニア、AI開発者に向けてさまざまなトレーニングを用意し、AIに求められるセキュリティや倫理への対応も厚くする。また、2022年末には1億ユーロ(120億円)を投資したAIの応用研究拠点が稼働する。

 ZFは自動運転車の車両制御ソフトウェアの開発に「DevOps」(開発=Developmentと運用=Operationsが協力し、ビジネス要求に対して、より柔軟に、スピーディーに対応できるシステムを作り上げる手法)やクラウドベースの開発環境を取り入れる。DevOpsの導入は、レーダーやカメラなどのセンサーとサスペンション、ステアリング、ブレーキを協調させる統合制御ソフトウェアのプラットフォーム「cubiX」の開発から開始する。

 DevOpsを取り入れることで、ソフトウェアの開発期間を短縮し、柔軟なソフトウェア更新に向けたアジャイルな連携を実現する。複雑なサービス指向システムの統合を容易にするとともに、開発状況への迅速なフィードバックが可能になるという。車両制御の鍵を握るドメインコントローラーがソフトウェアによって性能が定義される部品になっていくとの予測に立ち、こうした取り組みを強化する。

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