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「umatiとはUSBのようなもの」キーマンに聞くumatiの最新仕様と将来像いまさら聞けないumati入門(3)(2/4 ページ)

工作機械の共通インタフェースとして注目を集める「umati」。「umati」とはどういう規格でどう活用すべきかを紹介してきた本連載だが、第3回は「umati」の規格策定を進める組織の中核を担うアレクサンダー・ブルース氏へのインタビューの内容をお伝えする。

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今後のumatiの仕様拡張の予定

筆者 今後のumatiの仕様拡張についてどう考えているのでしょうか。

ブルース氏 umatiの次のステップであるバージョン2.0で想定しているのは生産実行の領域だ。上位システムの生産計画に基づき、加工のために必要な部品情報、プログラム、工具情報などを対象の機械へ送り込むことを目指している。

 バージョン1.0では稼働監視までと明確な線引きをしているumatiだが、当然その先の仕様拡張の検討をしている。その対象として考えているのが生産実行だ。上位のシステムが作成した生産計画に基づき、加工のために必要な部品情報、プログラム、工具情報などをシステムから対象の工作機械へ書き込む仕組みを定義するという。さらに必要に応じて上位システムから工作機械の自動運転のスタートや緊急停止などを可能とすることも検討しているという。ただこれらの技術は検討すべき要素も多く、どこまでの機能が実現できるかはまだ定かではない。

 またバージョン2.0で拡張を検討するもう1つの機能が、機械種類ごとの専用データの設定だ。バージョン1.0ではどんな種類の機械に対しても共通のデータ項目を定義していたが、実際には、例えば砥石を使う研削盤だけには砥石管理の情報が必要など、共通項目内では表現できなかった要素が存在する。これに対応するためにマシニングセンタ、旋盤、研削盤、レーザー加工機といった機械種類ごとの専用データを持たせるような構造の検討がされているという(図3)。

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図3 「umati バージョン2.0」を含むumatiの今後の予定(クリックで拡大)(出展: VDWの資料を基に筆者が加筆、https://vdw.de/wp-content/uploads/2019/09/01-umati-Connecting-the-world-of-machine-tools_Broos_VDW.pdf

 一方で、バージョン2.0でもまだ取り組まないと決めた内容もある。例えば、工作機械に付属する周辺装置情報の取り扱いである。具体的にはパレットチェンジャーや段取りを行う産業用ロボット、さらにはそれらを統合した自動化システムといった装置などの情報だ。このあたりはもう少し先のフェーズで検討されることになるだろう。

 実はumatiに先行する形で進んでいるEUROMAPという射出成形機の共通インタフェース規格では、こういった周辺装置情報の規格化が既に始まっている(※)。射出成形機本機におけるEUROMAPの仕様はほぼ固まり、射出成形機と一緒に使う周辺装置の拡張仕様に注目が集まっている。例えば、温度調節器や取り出しロボットなどとの連携である。umatiでも将来的にはこういった周辺装置向けの拡張仕様が話題となってくるはずだ。

(※)関連記事:プラスチックやゴム用加工機で「つながる」を実現する「EUROMAP」とは何か

 また、最近大きな注目を集めている「予兆検知」に関する内容もバージョン2.0には含まれない。工作機械にとってスピンドルやモーター、ガイドなどの基幹部品の故障による稼働停止は、対策が必要とされる重要な課題だ。それを防止する方策として期待されている予兆検知は、工作機械メーカーや工作機械の要素部品メーカーが重点的に取り組んでいる内容である。ただ、明確な規格に落とし込めるところまで手法が熟成されていないのが実情としてあり、umatiとしての対応は先送りすることになった。実際、予兆検知についてはumatiのトピックとして議論するよりも、専門の検討組織を立ち上げ規格化を進め、そこでの結論をumatiに取り込むような流れが必要ではないかという議論の順序についての指摘も出ている。

 さらに、加工ワークや工作機械自体の計測データのumatiでの規格化についても意見が上がっているが、こちらもバージョン2.0では見送られる予定だ。理由は同様で、umatiのトピックとして検討する以前に計測データそのものとしての規格化がまずは必要になるとされている。

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