「umatiとはUSBのようなもの」キーマンに聞くumatiの最新仕様と将来像:いまさら聞けないumati入門(3)(3/4 ページ)
工作機械の共通インタフェースとして注目を集める「umati」。「umati」とはどういう規格でどう活用すべきかを紹介してきた本連載だが、第3回は「umati」の規格策定を進める組織の中核を担うアレクサンダー・ブルース氏へのインタビューの内容をお伝えする。
umati規格の意思決定
筆者 umati規格を策定する意思決定のステップはどのようになっているのでしょうか。
ブルース氏 umati規格のドラフトは、コアパートナー(Core Partner)から人が集まることで作成されている。ドラフトの内容はJWG(Joint Working Group)に諮りレビューを行う。JWGへの参画団体の8割の賛同が得られたら承認となる。
umati規格のドラフトの準備は、10社の工作機械メーカーと1つの研究機関(シュツットガルト大学)から構成されるコアパートナー、それにVDWを加えた12団体により進められている。このコアパートナーは規格策定のために1社から1人以上、活動のための人を出すことが義務付けられているのだ。
このメンバーにより策定されたumatiのドラフト仕様はumati partnerが参加するJWGに公開される。JWGは2019年2月にスタートし、同年9月時点で50を超える団体が参加している。JWGの参加団体はumatiのドラフト仕様に目を通し、ユーザーとしての観点からumatiの仕様に対しての意見をフィードバックすることが役割だ。このコアパートナーもJWGも、参画には費用はかからない。役割は違っても「umatiの規格策定のために仕事をするけれども報酬は無い」という位置付けで活動をしている。
umati規格に関する意思決定も、定期的に開催されるJWGのミーティングにて行われている。投票は企業規模に関係無く1社1票を持ち、議題に対してメンバーの8割以上の賛同が得られれば意思決定が行われるという進め方だ。業界標準の規格を定める活動としては比較的緩やかなルールだと感じられるだろうが、立ち上がって間もない組織と規格であり意思決定のスピード感が求められるということからこのような方式が取られているという。ある程度ベースとなる規格が定まってくれば、将来的にはISOのように規格の改定まで数年かけて行うというように変わっていくことも考えられるだろう。
また、umatiの活動への参加形式としてアソシエーションパートナー(Association Partner)という位置付けも存在する。umatiに協力する各国の工作機械工業会などがこれに相当する。これに加入すると、umatiに関する最新情報やイベントを協会に所属する工作機械メーカーなどに告知することが義務となる。アソシエーションパートナーはこういった情報伝達という役割が主目的であるためJWGが持つような直接的な意見の提出や、意思決定のための投票などは行わない。現時点では中国や台湾の工作機械工業会がアソシエーションパートナーとして参画しており、EMO2019でもそれぞれの国の工作機械メーカーのumatiへの対応をアピールするなど積極的な活動を行っていた(※)。
(※)関連記事:EMO2019に見る「umati」最前線、工作機械110台がつながった「umati@EMO2019」企画
図4 umatiに参画している各種パートナー一覧(クリックで拡大)(出典: VDW、https://vdw.de/wp-content/uploads/2019/09/01-umati-Connecting-the-world-of-machine-tools_Broos_VDW.pdf)
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