ラズパイ4とJetson Nanoは大注目、パナソニックを変える“懲役5年”おじさんとは:組み込み開発 年間ランキング2019(2/2 ページ)
2019年に公開したMONOist組み込み開発フォーラムの記事をランキング形式で振り返る。1位に輝いたのは、3年ぶりの新モデルが発売されたあの製品の解説記事でした。
2019年、MONOistが注目していたおじさんから衝撃コメント「懲役5年」
ベスト3に入らなかった中から、(編集担当にとって)興味深い記事を2本紹介しましょう。
1本目は、ギリギリトップ10の選外、第11位に入った『「VxWorks」にゼロデイ脆弱性、「URGENT/11」は2億個のデバイスに影響』です。
VxWorksのような組み込みOSは、WindowsやLinuxなどと違ってあまり脆弱性に関する話を耳にすることは多くありません。これは、組み込み機器をインターネットとつなげて使うことを前提としていなかったからこそなのですが、IoT時代に入った今そんな前提は崩れ去りました。
本記事で発見された脆弱性のURGENT/11ですが、米国のセキュリティカンファレンス「Black Hat USA 2019」に併せて発表されました。発表前の時点で、発見者のアーミス(Armis)の通告を受けてウインドリバーが対応パッチを発行していたこともあり、大きな問題にはなっていないようです。
しかしこれからより本格的にIoTが浸透するにつれて、組み込み機器向けのOSやソフトウェアの脆弱性の問題がクローズアップされていくことになるのは確実でしょう。今回のURGENT/11は、そのことを知らしめた代表的な事例の1つになると思います。
2本目は、MONOist年間ランキング恒例(?)のエネルギッシュおじさんシリーズです。2016年は元東京大学、現東洋大学の坂村健氏、2017年は革ジャンおじさんことNVIDIA CEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏、2018年は日産自動車 元会長のカルロス・ゴーン氏をフィーチャーしました。
さて2019年ですが、ここは1つ筆者個人の思い入れを含めて、パナソニック 専務執行役員でCTO、CMO(チーフマニュファクチャリングオフィサー)を務める宮部義幸氏を挙げたいと思います。
同社の技術開発部門に相当するイノベーション推進部門を統括する宮部氏ですが、これまでも会見などで取材する機会はありました。しかし、MONOistの2019年は、これまでよりもはるかに濃い密度で宮部氏と接した1年間だったといえるでしょう。
まずは2019年1月、「MONOist IoT Forum in 大阪」の基調講演で宮部氏に登壇していただきました。2018年に創業100周年を迎えた同社の歴史を振り返りつつ、101年目で目指していく方向性などについて語ってもらいました。
そして同年7月には単独インタビューも敢行しています。シリコンバレーの新拠点「Panasonic β」の狙いや、今後の同社の研究開発の基礎を固めるためのソフトウェア開発体制の強化などについて聞いています。
正直なところ、話し方も丁寧で物腰も柔らかな宮部氏は、これまで紹介してきた坂村氏、フアン氏、ゴーン氏ほどのエネルギッシュ系のキャラの濃さはありません。しかし、パナソニックという巨大な企業体を新たな時代に向けた体制に変えようという意志は強く感じます。パナソニックを変える外部からの人材として期待されている、元SAPジャパンの馬場渉氏や、ハードウェアベンチャーCerevoの創業者である岩佐琢磨氏が加わったのは、宮部氏の存在によるところが大きいでしょう。この流れから、2019年10月にはグーグル(Google)米国本社のバイスプレジデントとスマートホーム製品「Google Nest」のCTOを務めていた松岡陽子氏もパナソニックに入社しています。
そんな宮部氏のパナソニックにおけるキャリアについて聞く機会が2019年末にありました。1983年にパナソニック(当時の松下電器産業)に入社してから16年間技術開発の現場にいたそうですが、1999年から4年間は、通信を活用したデジタル家電サービスなどに取り組んだ新規事業「eネット事業」の立ち上げに携わりました。しかしこのeネット事業はうまくいかず、2003年から5年間はコーポレートのR&D戦略室の技術戦略スタッフへの異動を余儀なくされました。宮部氏はこの5年間を「懲役5年」と言うほどいろいろあったようですが、2008年には技術担当役員となり、AVCネットワークス社の社長を経て、2015年から技術開発部門のトップを務めています。
そんな「懲役5年」を経験した人物だからこそ、パナソニックを変えて行くためのダイナミズムを生み出せているのではないかと思います。
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