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日本のAUTOSAR関連開発:マニュアル頼りで大丈夫? 外注化は今のままで持続可能?AUTOSARを使いこなす(13)(3/3 ページ)

車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載の第13回は、第11回と第12回で筆者が提案したAUTOSARに関するスキルや研修に関する取り組みの現状について報告する。マニュアルを基にした運用や外注の活用本当に問題はないのだろうか。

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スキルや研修に関する取り組みが必要ないというご意見に対して

 なお、逆に「全く困っていない」とおっしゃる方々もおいででした。

 1つ目のパターンは、ユースケースを完全に固定※2)してしまいマニュアル化するというアプローチ、つまり、「ただ、なぞることができるようになる」で十分(「従う力」だけで十分)、ということのようです。

※2)ユースケースの固定:対象自動車メーカーやECU、そのソフトウェア構造や機能、使用する組み込みソフトウェア製品やツールなどを固定すること。

 ただ、当然のことですが、従来と同じように継続的改善は必要ですから「マニュアルができたら終わり」で済むはずもありません。何よりも、マニュアルの寿命は、ユースケースの寿命に支配されますし、自動車業界は、それこそ100年に一度の大きな変化の真っ只中にあります。

 「従う力」だけではなく「適応力」についてもお考えいただく必要があると思いますし、システムやそれに関する知識体系が膨れ上がってしまっている今、一部の方だけが「適応」を受け持ち、後は「従う」ことに専念する、というアプローチで果たして対応できるのか、疑問を感じます。

 試しに、AUTOSARの安全や通信関連の部会の会合(2019年11月と12月のブダペスト/ウィーン会合)でこのような話を持ち出してみたところ、「適応の部分を誰かに任せるって、正気か? 良いクルマが作れてきた日本って、一体どうなってるの?」と逆に質問攻めにあう始末でした(そして、あるベテランのドイツ人エキスパートからの「これまで作れてきたからといって、これからも作れるという保証があるわけではないだろうけどさ……」という何気ない一言で、あらためて不安がかき立てられたのを思い出します)。

 標準規格もプロセス文書も、作成することよりも保守/維持することの方が難しくなりがちです(そもそも、新規性があることから価値の説明が比較的容易な「新規作成」に比べ、「保守/維持」に対して十分な投資を確保するのは容易ではありません)。マニュアルを作り更新できる人材や、投資の必要性の有無を判断する能力の維持だけのためにでも、スキルや研修に関する取り組みは欠かせないと思いますが、いかがでしょうか?

 2つ目のパターンは「外部に頼めるから大丈夫」というものでした。でも、外部に依頼するための適切なインプットを出すことからは逃れられませんし、Automotive SPICEやISO 26262でも依頼先の能力評価が必要とされています。また、自分たちが何をやって、外部に何をやってもらうのか、という線引きの表現には少なくない数の方々がお困りと伺っています。だからこそ、外部に「安心して託す」ことができるようにするために、この取り組みをご提案差し上げているのですが……。何がどうこじれてこうなってしまったのか、まだ私には理解できておりません(もしかしたら、図2の地平線の先が見えていらっしゃらないだけなのか、あるいは、もしや「相手が引き受けると言えば、それで自分の責任は果たしたことになる」とおっしゃりたいのではないか、と疑いたくもなります)。

図2
図2 視点が高くなれば、地平線の先に隠れていた「新たな課題」が見えてくる(クリックで拡大、連載第3回から再掲)

 また、一部からは「解決策が固まったら使わせてもらうよ」というお言葉も頂戴しました。

 こちらでご用意した解決策を「万能のものである」と信じてくださるのは誠にありがたいことですが、果たしてそのようなものに仕上げられるのかどうか、はなはだ疑問です(まさか、AUTOSARからその先の世代のものに移行することになるなどで、私たちがメンテナンスを止めることにした後の「最終バージョン」を使いたい、ということではないでしょうし……)。

 各社異なるご事情/しがらみがおありなはずですから、そういったインプットだけでも頂戴できればとは思っています。

次回の予告

 先述した通り、年明け以降に掲載する次回は、2019年11月28日にリリースされたAUTOSAR R19-11の現状や変更内容についてご紹介していきたいと思います。

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