イノベーションを阻害するのは日本人? パナソニックが中国地域社を作った理由:製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)
パナソニック 中国・北東アジア社の社長 本間哲朗氏は2019年12月13日、報道陣との共同インタビューに応じ、あらためて中国・北東アジア(CNA)社設立の狙いを説明するとともに、2019年4月からの取り組みを振り返った。
家電と住設の融合を“中国で”実現する
―― 中国・北東アジア社の1年目となるが、パナソニック内において中国・北東アジア社の位置付けをどう出していくのか。
本間氏 1つ目は、中国のプレーヤーと同じようなコストでモノを作る仕組みを作るということだ。製造業において大量生産のビジネスモデルの中心地が中国にシフトする中で、大量生産を行うのに最適なサプライヤーや環境が、中国内で整う状況が生まれている。こうした状況を生かし、コストでも対抗できるような製品開発が行えるようにする。
もう1つが、家電と住設の2つの垣根をなくし、組み合わせて提案するような枠組みを中国で実現させたいということだ。これは私が日本の家電責任者として取り組んできたときにも解決できなかった課題だ。この2つを整合させるスキームを成功させ、その他地域に展開できるようにしたい。
―― 現地でのモノづくりを独立的に進めるという話だが、開発の体制はどうなっているのか。
本間氏 中国国内で研究開発を担当する人員は1500人いる。現在でも中国の製品は基本的には中国国内で設計している。ハードウェアだけでなくソフトウェアの開発人材もそろっており、IoT(モノのインターネット)機能などもほとんど現地で対応できるようになってきている。
中国で先行して市場形成が進むIoT家電
―― IoT家電に力を入れるとしているが、現状では中国においても求める人や求めない人がいると思う。どういうことを考えて取り組んでいるのか。
本間氏 中国で現地の特派員などとよく話すのが「出張で来るのと現地に住むのでは大きな違いがある」ということだ。中国では既に決済が現金からスマートフォンに移っている。赴任してから現金をほとんど触ることはない。この結果が何をもたらしているかといえば、あらゆる業態が「ビッグデータを活用する」という形へと変化していることだ。こうした状況を踏まえるとモノづくりについてもこうしたビッグデータを活用するのが当たり前のものとなってくる。
こうした状況を受けて中国ではIoT家電もさまざまなものが登場している。ただ、本当の意味で顧客価値を実現できているかというとそうではない。どのように価値を作り出せばよいのか悩みながら取り組んでいるのが現実だ。ただ、今この中に入り込んでパナソニックとしても取り組んでいかなければ、二度と追い付けなくなるのではないかという危機感がある。中国がIoT家電の開発に最適だと考えるのは、ほとんど全ての人がスマートフォン端末を持っており、スマートフォンによるサービスありきで考えるのが無理なくできるからだ。中国でトライアルを進め、価値を創出できれば、それをアジアの他地域でも展開できるようになると考えている。
―― IoTでつながることが前提になった時にその中でもパナソニックに残る競争優位性にはどういうものがあるか。
本間氏 中国・北東アジア社の管轄でナンバーワンシェアを獲得している製品が2つある。1つは温水洗浄便座、もう1つが浴室暖房機だ。決して多いとはいえないが、ナンバーワン製品が空間の中にあるというのは非常に大きなもので、そこを突破口に使うことができる。その意味で関連製品の提案を進める場合に、住空間で提案できる製品のカバー範囲が非常に広いというのがパナソニックの特徴だ。これは他の中国メーカーにはないもので強みにできると考えている。
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