データムを必要とする幾何公差【その3】〜姿勢公差の傾斜度〜:産機設計者が解説「公差計算・公差解析」(10)(4/4 ページ)
機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第10回はデータムを必要とする幾何公差をテーマに、姿勢公差の傾斜度について取り上げる。
「理論的に正確な寸法」について
さて、これまで何度か「理論的に正確な寸法」という表現を使用してきました。これをJISで検索してみましょう。
「JIS B0021:1998 製品の幾何特性仕様(GPS)−幾何公差表示方式−形状、姿勢、位置及び振れの公差表示方式」を確認すると、以下のような理論的に正確な寸法に関する解説があります。
11.理論的に正確な寸法
位置度、輪郭度または傾斜度の公差を一つの形体またはグループ形体に指定する場合、それぞれ理論的に正確な位置、姿勢または輪郭を決める寸法(距離を含む)を理論的に正確な寸法という。理論的に正確な寸法は、データム系の相対的な姿勢の決定に指示する寸法にも用いる。理論的に正確な寸法は、公差を付けず、長方形の枠で囲んで示す。
これを要約すると、理論的に正確な寸法とは「バラつきのない図面上の理想的な寸法値」であり、「公差域をどの位置に設定するのかという基準」を意味します。
JISの解説にある通り、付加記号の1つとして扱われ、長さや角度のサイズ値を長方形の枠で囲むことによって図面に表します。サイズ公差(±○○)は記入されていません。サイズ値を長方形の枠で囲まなかった場合は、理論的に正確な寸法と定義できず、サイズ公差が適用されてしまいます。この場合、公差域の基準が設定できないという幾何公差との矛盾が生じます。
一体、どれだけの設計者がこの表示方式を正しく理解し、使用しているでしょうか。もう一度、その内容を確認すると同時に、幾何公差をうまく使用できるよう学んでいきましょう。 (次回に続く)
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