サプライチェーンマネジメントは新ステージへ、全体最適の範囲を拡張せよ:サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会(4)(3/3 ページ)
物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する本連載。第4回は、「全体最適の範囲の拡張」を目指す次世代のサプライチェーンマネジメントについて説明する。また、その成功例となる、ZARA、コマツ、ジョンディアのケースを見て行こう。
次世代テクノロジーを戦略的に活用することの重要性
本稿の冒頭に記したように、サプライチェーンマネジメントを「将来の成長を実現するための競争優位の基盤」にしようとするのなら、調達、生産、保管、輸送、販売といった供給のプロセスだけではなく、企画・設計、研究開発、財務管理、設備投資、マーケティング、アフターサービス、リユース/リサイクル、廃棄といった機能をも対象にした全体最適の追求が求められます。つまり、その全てを見える化し、適切な判断を下せるようにする必要があるわけですが、人的リソースだけでそれを成し遂げることは不可能です。だからこそ、IoT、AI、センサーといった次世代テクノロジーの革新が期待されるわけです。
ZARA、コマツ、ジョンディアのように、自社の事業基盤として投資を実行することも有効でしょう。あるいは、本連載の第2回目に紹介したようなデジタルツールを活用することも一考です。ただ、いずれにしても、「次世代テクノロジーの戦略的な活用なくしてサプライチェーンマネジメントの進化はない」と思います。
さて、次回は、サプライチェーンマネジメントの未来の方向性として、「チェーン=鎖」から「ウェブ=クモの巣」へのトランスフォーメーションを取り上げます。「サプライウェブ」という新たなプラットフォームの出現がもたらす事業環境への影響を解説します。
筆者プロフィール
小野塚 征志(おのづか まさし) 株式会社ローランド・ベルガー パートナー
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了後、富士総合研究所、みずほ情報総研を経て現職。ロジスティクス/サプライチェーン分野を中心に、長期ビジョン、経営計画、成長戦略、新規事業開発、M&A戦略、事業再構築、構造改革等を始めとする多様なコンサルティングサービスを展開。2019年3月、日本経済新聞出版社より『ロジスティクス4.0−物流の創造的革新』を上梓。
https://www.rolandberger.com/ja/Locations/Japan.html
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