出身者と現役が語る「学生フォーミュラで培われる“現場力”」:学生フォーミュラ2019(2/4 ページ)
学生がクルマ作りの総合力を競う「学生フォーミュラ」。クルマ作りの過程での厳しい経験を踏まえた人材は、社会人でも活躍するという声が多い。学生フォーミュラではどんな“現場力”が身に付くのだろうか?
近畿大学でファカルティアドバイザー(FA)を務める理工学部機械工学科准教授の梶原伸治氏は、学生当時の出口氏をこう振り返る。
「学生フォーミュラ出身者が社会人で活躍しているのはとてもうれしい。彼(出口氏)は当時からとにかく一生懸命やっていた。設計したフレームの強度が出ず、年末にフレームを一から作り直したこともあった。厳しい経験をすることで自然と自分のポテンシャルが上がっていくのだと思う。そして社会人になったとき、仕事のピークにもしっかり対応できるようになる」(梶原氏)
出口氏はいま社会人8年目だが、機械・自動車部品、化学品、電機・家電とモノづくりの名だたる大手企業3社を経験、バリエーション豊かな業務に携わることでさまざまな業界のモノづくりへの考え方を学ぶことができたという。
「1社目ではかんばん方式を、2社目は化学品メーカーとしての立ち位置、3社目では家電系セットメーカーとしてトヨタなど自動車メーカーとはまた違うモノづくりの考え方を学んだ。今後は、文化の違う企業での経験を生かして、自分だからこそできるモノづくりの新しい提案もしてみたい」(出口氏)
モノづくりの生産性を向上させていく人材
出口氏のような“現場力”の高い人材が学生フォーミュラから輩出されていることについて、VSN 人事本部 新卒リクルーティングセンター 東日本G グループリーダーの岡田昇悟氏は彼らの“基礎能力の高さ”を指摘する。
「新卒のリクルーティングで全国各地の大学を飛び回ったり、会社説明会、最終面接、内定が出た学生のフォローなど日頃から学生と接する機会が多いのだが、学生フォーミュラ出身の学生を採用したいと感じるシーンは非常に多い。サークル活動自体は多くの学生が経験しているのだが、学生フォーミュラほどチームビルディングが大事で、明確な目標に向かって1年間頑張り続けているものは他のサークルではあまりない。学生フォーミュラ出身者は志が高く、会話する中でも自然と対話力が磨かれているなと感じる」(岡田氏)
これら将来有望な学生を支援するため、VSNは2018年から学生向けロジカルシンキングセミナーを開催。学生フォーミュラでのプロジェクトを遂行する上で必要なことをまとめた内容で、指標としてのQCDの重要性やリーダーとフォロワーのあるべき姿、計画と役割の明確化、報連相の重要性、引き継ぎ方法、そして問題発生時の解決手法として帰納法・演繹法・MECEを組み合わせたVSN流課題解決術などをセミナーを通じて学生に伝えている。
「学生フォーミュラだけでなく、就活やその先の人生をバックアップできるような内容のセミナーを実施している。学校側からもぜひやってほしいという要望が多い。学生はどうしても主観的・感情的になりがちで、広い視野でプロジェクトを考えられない。課題解決には自分の感情はいったん置いておき、ロジカルな考え方で客観的かつ論理的に分析し進めていくことが必要。それを学生のうちからしっかり学んでいくということは社会人になったときに大きな糧になる」(岡田氏)
VSNでは出口氏のほかにも、学生フォーミュラ出身者で、現在自動車メーカーでレース用エンジン開発に携わっている人もいるという。
「われわれは現場の問題解決をすることで、モノづくりの生産性を向上させていきたいという思いがある。日本人の一人当たりの生産性が世界に比べて低い、という現状は日本のモノづくりが直面している課題そのものだと思っている。学生フォーミュラへの支援や学生向けセミナーなどを通じて課題解決力のある人材をサポートし、彼らが日本のモノづくりへ新風を吹き込んでくれる存在になってくれることを願う」(岡田氏)
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